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利益に関して【経営のヒント 483】

今月は利益に関して三話とりあげたいと思います。
<ドラッカーの一言>

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利潤動機なるものには、利益そのものの意義を神話化する危険がある。

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『実践するドラッカー 〔利益とは何か〕』p.8
『マネジメント』<上>p.71

お尋ねします。貴方は、企業は利益の最大化を目指して行動すべきだと勘違いしていませんか?
えっ違うの?…と思った方も多いと思います。

利益最大化を目指すという思考の源流にあるものが利潤動機です。
それは古典経済学が置いた一つの仮説に過ぎません。
歴史上、この利潤動機の妥当性が確かめられたことはありません。
ところが現代の都市伝説のように多くの人が信じてしまっているのです。それが問題なのです。

仮に企業に目的があるとすれば、利益をあげることはその目的に優先するのでしょうか?
そもそも利益をあげることは目的でしょうか?この点は次回に整理します。

仮に利益をあげることが優先するとして最大化という考え方は有効なのでしょうか?

上記の答えはどちらも否、否、否なのですが…その理由を明確に答えられるでしょうか?

利潤動機を源流とした利益最大化という思考は、
間違った仮説なので明確に答えられる人はいないというのが正解です。
問題なのは、この迷信を信じている経営者が多いことです。何が問題か?

端的な例を挙げます。

偽装問題―隠ぺい体質、責任回避など問題の根は様々ですが、
たとえば食品の日付偽装などのケースでは損を出したくないという誘因は
少なからずはたらいたのではないでしょうか?
つまりちょっとした誘惑で損得が善悪に優先するのです。

利益最大化という都市伝説が常識として染みついて
当然の善悪を優先しなければならない局面で判断が鈍ることが怖いのです。
このような極端な例でなくても次のようなことも考えられます。

少しぐらいなら…とトラックに荷物を積みすぎる過積載の問題、
運転手が足りないからといって発生する過重労働の問題、
処理料がかかるからと発生する不法投棄の問題、
多額の投資がかかるからと耐震工事を行わないという問題などなど。
損得という意識が背後に見え隠れします。

「最大化」という考え方が利益の優先順位を無意識に引き上げます。
利益に必要な基準は「必要な利益」です。
では何に対しての「必要」なのか。これは次回お話しします。

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<実践のための問い>

損益を優先していると感じるのはどんな場面ですか?

佐藤 等

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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