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人の強み【経営のヒント 492】

今月はドラッカー教授のマネジメントの根幹をなすコンセプト、人の強みをテーマにお届けします。
長文のドラッカー教授の言葉から始めます。

<ドラッカーの一言>
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わずか数十年前までは、ほとんどの人にとって、
自らの強みを知っても意味がなかった。
生まれながらにして、仕事も職業も決まっていた。
(中略)
ところが今日では、選択の自由がある。したがって、
自らが属するところがどこであるかを知るために、
自らの強みを知ることが必要になっている。
●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●
『実践するドラッカー〔思考編〕』p.152
『明日を支配するもの』p.194

職業の選択が自由であるということは先進国における現代社会では、疑問の余地なく当然のことです。
しかし変な言い方ですが自由であることによる不自由(とあえて表現します)を感じる場面もあります。

たとえば大学や高校を卒業して就職する際、どうやって希望の職種を選ぶのか?
多くの若者の思考パターンは就職ではなく就社です。
企業側もたとえば「総合職」に代表されるように職種を意識しにくい状況に置かれています。

ドラッカー教授は、「働いてみないと強みはわからない」といいます。
その意味で、どんな職種につくかわからない「総合職」は正解なのかもしれません。
そんな状況下で、3年程度で会社を辞める現代の若者が増えたと報じられずいぶん年月が経ちます。

短期間で辞めていく若者の背中を見つつ、「それで強みはわかったのかい」と問いかけたくなります。
厚労省の統計では、中学、高校、大学の卒業3年後の離職率は、それぞれ65.3%、40.0%、32.3%となっています。
先日、銀行の担当者に聞いたところ わが社でも3年で3割は変わらないとのこと、多くの企業の実態だと感じました。
その後、転職を繰り返しニート生活に陥らないように願うばかりです。

このような状況で企業側の責任は重大です。
企業のトップやマネジャーが「人の強み」のマネジメントをしっかり身につけ、実践していくことが大切です。
具体的には、職場は一人ひとりの強みを発見し、磨き、それを用いて組織に貢献していく場だということを
声を大にして、繰り返し伝えることです。

「何となく職場や職種があっていないような気がするから」という離職理由の背景には、
「他にもっとあう職場や職種があるはず」との思いがあるのではないでしょうか。
決して3年が短いとは言いません。3年間の経験をもとに離職の際には、
「私の強みは〇と×なので△や□のような職種につきたいと思います」と
言えるスタッフに育てておくことが重要ではないでしょうか。

それは決して本人のためだけではありません。
そのような成長の軌跡をたどることは、組織側もそれぞれの強みを生かした
スタッフによって運営されていることを意味します。
組織の力の根源は一人ひとりの異なる強みにあることを徹底するマネジメントが求められます。

不自由を感じるもう一つの場面は、事業承継(とりわけ同族会社の場合)です。
後継者の強みの問題です。紙面の関係で簡略化してお伝えします。
ドラッカー教授は「マネジメントはチームで行うべき」といいます。
そのことは、後継者はある程度の期間をかけて強みを生かしあい、
弱みを補ってくれる人材で構成されるマネジメント・チームを構築する必要があることを意味します。
自他の強みを知ることからスタートします。

組織では、多くの場面で強みのマネジメントが必要とされます。
そのポイントについて今月はお伝えしていきたいと思います。

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<実践のための問い>

どのような場面で強みのマネジメントの必要性を感じますか?

佐藤 等

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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