いかに賢明になろうともコミュニケーションは成立しない【経営のヒント 496】
「われわれはこれまで数百年にわたって、コミュニケーションを上から下へと試みてきた。
しかしそれでは、いかに賢明になろうともコミュニケーションは成立しない」(『マネジメント〈中〉』p.152)
さて現代の状況はいかに…今月はドラッカー教授がコミュニケーションをどのように考えていたかを見ていきます。
<ドラッカーの一言>
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コミュニケーションは、受け手とされる人からスタートしなければ
ならない。すなわち、上へ向けて始めなければならない。
下へ向けたコミュニケーションでは機能しない。
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『実践するドラッカー〔チーム編〕』p.184
『マネジメント〈中〉』p.155
方向が逆だとドラッカー教授はいいます。
続けて「上の者が下に向けて行えるのは命令だけである」と。
大量生産の時代は「これを言うとおり作れ」で事足りていました。
むしろ余計なことは考えるなということなのでしょう。
しかし世は知識労働の時代。
知識労働者の定義を思い出してください ―自分で考え、決定し、行動する人。
現場にこそナレッジが蓄積しています。
それゆえ組織の上に置くほど専門的な経験や知識、スキルが希薄化していきます。
たとえば、厨房に入ったことのない飲食店経営者が存在する時代です。それが常態です。
このような中で「指示・命令」は無力化します。また上から与えられたマニュアルも同様です。
ドラッカー教授がナレッジ・ワーカーに対峙するコンセプトをマニュアル・ワーカーとしたのも偶然ではありません。
われわれのミッションは何か、われわれの成果は何か、われわれの目標は何かなど
下から上に向けた問いかけからコミュニケーションは始まります。上とは上司とは限りません。
誰とコミュニケーションするかよりも、どんな内容をコミュニケーションするかが大切です。
前回メルマガの言葉にある「貢献に焦点を合わせる」ことは、上記のような問いに答えなければ得られません。
コミュニケーションする内容が重要です。「どうやって」ではなく「何を」に意識を向けることも大切です。
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<実践のための問い>
上から得なければならない情報は何ですか?
佐藤 等