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このニュースの意味は何か【経営のヒント 513】

毎日のテレビや新聞で出合うニュースは何を示しているのでしょうか。
「このニュースの意味は何か」ということです。
前回のメルマガで「物事の意味、質、理解の変化」について述べました。
皆さんはニュース記事をどのように活用していますか。

<ドラッカーの一言>

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個々の事象は、目新しいものではない。だが集めて一つの
絵とするならば、その景観は、われわれが日常見ている
ものとは大きく異なる。

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『断絶の時代』まえがき

4月上旬に「パナソニックは4月に予定していた宅配ボックスの新製品の販売を約2カ月延期すると発表」しました。
延期した理由は生産能力の5倍の受注があったからです。大人気ということです。

このニュースの背景には何があるのでしょうか。どのような意味を読み取らなければならないのでしょうか。

宅配便の再配達率が20%もあるといいます。
クロネコヤマトは、2016年の取扱い荷物が18億個を超えたため総量規制を行うようです。
その対応として宅配ボックスの需要が高まっているという背景があります。

宅配ボックスは設置が一巡すれば落ち着くと思います。
しかし、これは兆(きざし)にすぎないのです。
何が起こっているのでしょうか。主に3つのことが日本で進行中です。

第一に、流通業における人不足があります―今年2月の完全失業率は1994年6月以来、22年8カ月ぶりに2%台となり、
どの業種も人手不足が常態化しています。この状況は日本の人口が減少局面に入って益々深刻化します。
未来はすでに起こっているのです。

第二に、共働き世帯の増加があります―共働き世帯はすでに1000万世帯を超え、
無職の主婦がいる世帯を300万世帯以上も上回っています。
しかしこの変化は今に始まったことではありません。

1992年に逆転し、その後拮抗し、1997年以降は共働き世帯が常に上回っています。
両者の乖離が決定的になったのは2002年からです。
ちなみに1980年時点では、共働き世帯の方が500万世帯も上回っています。
その後、一貫して主婦の社会進出が進み、今を迎えています。
未来はすでに起こっていたのです。

第三に、消費行動の変化―ネットショッピングを利用した世帯の割合が
2015年に 2002年の 5.2 倍と上昇中です。
旅行関連が1位ですが、食料、衣料・履物、教養関係、家電・家具と続きます。

2016年にクロネコヤマトが18.6億個の荷物を取り扱つかい、
総量規制を生む原因となったのがこれらの通信販売による取り扱いの急増です。
未来はすでに起こっていたのです。

上記は誰でも、どこかで断片的に耳にしたニュースだと思います。
このような社会背景の一端が宅配ボックスの人気沸騰です。

単に現象面に目を向けるのではなく、労働人口の減少、共働き世帯の増加、
通信販売での購入という行動変化などの背景にあるものと
私たちのビジネスはどのように影響を受けるのかを考えなければなりません。
それはどのような絵に観えてきますか。

佐藤 等

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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