産業人の未来【経営のヒント 523】
私たちは、様々な事実に直面しています。
ドラッカー教授は、大切なのはその事実の意味だといいます。
<ドラッカーの一言>
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事実そのものは意味をもたない。何も創造しない。
何も解決しない。単に存在するだけである。
それが意味をもつか、もつとすればいかなるものか。
それは何を創造するのか、破壊するのか。
何を解決するのか、解決するとすればいかなる方法によってか。
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『産業人の未来』p.17
今月から日本において仮想通貨に消費税がかからなくなりました。
この事実は今年4月の「改正資金決済法」に伴う変更です。
「この事実は何を意味するか」
そう考えることが重要だとドラッカー教授はいうのです。
たとえば、この事実は代金決済方法として定着していく可能性を
高めたことを意味します。
2014年に取引所「マウントゴックス」が破綻し、巨額の仮想通貨が
消失したことなどから健全な取引慣行が育っていくことが
求められていいます。
そのために法改正は「仮想通貨交換業」として取引所の登録を
求めることとしました。
資本金は1千万円以上とし、外部監査を義務づけました。
意味(目的)が明確になり制度が変わったのです。
しかし健全な取引市場の創造の可能性とともに、
マネーロンダリングによる社会価値の破壊という負の側面の
可能性も残しています。
仮想通貨は国際送金の手数料が格段に安く速いというメリットが
あります。
このような利便性から危機感をもった日本のメガバンクが
仮想通貨交換業への進出を決めています。
送金や決済という機能の他、投機対象として注目もされています。
所有者保護というこれからの課題を抱えています。
メリットを引き出すための手段として何が必要なのか、デメリットを
軽減するためにどのような手段が必要なのか。
一つの事実を基にその「意味」を考えることが起点となります。
すべては「事実をいかに扱うかによって定まる」と
ドラッカー教授は言います。
「事実」を意味あるものとするのは私たち次第なのです。
佐藤 等