断絶の時代【経営のヒント 526】
トヨタが電気自動車(EV)の開発に舵を急旋回させています。
トヨタはハイブリッドカーの次に燃料電池自動車(FCV)
―燃料電池で水素と酸素の化学反応によって発電した電気エネルギーを
使って、モーターを回して走る自動車―を位置づけて開発を
続けてきました。
ここに来ての急旋回の訳はイギリスやフランスの宣言―2040年まで
にディーゼル車とガソリン車の販売を禁止する―にあります。
中国も電気自動車を国策として舵を切ろうとしています。
<ドラッカーの一言>
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予測の危険は、起こらないことを予測することよりも
重大な間違い、すなわち重要なことを予測しない
という間違いにある。
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『断絶の時代』p.23
相次ぐディーゼル車とガソリン車の販売を禁止宣言は、トヨタの
予想より早く次世代への移行が進むことを意味します。
その結果、自車発電する燃料電池自動車(FCV)は、
充電により走る電気自動車の次の世代の自動車に位置づけざるを
得ない状況に追いやられたように見えます。
「2040年までの20数年で起こることは何か」と問いかけたとき、
トヨタは「燃料電池自動車(FCV)への移行は起こらないかも
しれない」と考えたのでしょう。「電気自動車へのシフト」という
「重要なことを予測しない」という重大な過ちを回避したのです。
日本では電気自動車は日産が先行していました。
一方でグローバル製品となった自動車は各国の事情を背景に思わぬ
スピードで進み出しました。
一つの見方として一斉に夜、家庭で充電が始まると今の発電量では
まかないきれないのではないかという課題も見え隠れしています。
もしそうだとすればクリーンなエネルギーで走るために、発電所を
増やすこととで環境負荷が増すかも知れません。
宣言一つで企業行動が変わる―それは本当にすでに起こった未来なの
でしょうか。
すでに起こった未来とはタイムラグのことです。
トヨタは当面三方面作戦(ハイブリッド、燃料電池、電気)を
取らざるをいないでしょう。
今回の決断がトヨタに、そしてそれはとりもなおさず日本に
どのような未来をもたらすのか…目の離せないテーマです。
佐藤 等