事業の目的は顧客価値の創造である【経営のヒント 546】
「原理とは、それに沿えば必ずうまくいくというものではないが、それから踏み外した
ときには確実に失敗する」と早稲田大学MBAの西條剛央先生はいいます。
「失敗しないための原理のマネジメント」とは成功を求めて原理に反した方法をとるという
愚を犯さないためのマネジメントです。
前回示した原理は「事業の目的」に関するものです。
事業の目的は顧客価値の創造である<マネジメントの原理7>
事業に関してはいくつかの原理があります。次は原理というよりも定義というのがより正確です。
事業とは知識という資源を経済価値(顧客価値)に転換するプロセスである<マネジメントの原理8>
ここでは3つのことが述べられています。
事業の定義
①事業はプロセスである
②事業というプロセスに知識を投入する
③事業というプロセスから経済価値(顧客価値)を生み出す
事業を考える際、この3つのことを十分に検討し、時々に見直すことが重要だということです。
プロセスとは仕組みのことです。 仕組みは具体的にはいくつかの業務で構成されています。
また業務は仕事と作業の塊です。
プロセスに投入されるのは経営資源です。
一般的にはヒト・モノ・カネなどと呼ばれます。
しかしカネには色がついていないし、必要なモノは一般的に誰でもお金さえあれば買える
ものです。
つまり本質的には、カネやモノでは他と違いを生み出すことはできないということです。
では違いの差はヒトなのか?答えはヒトなのですが、組織で利用している資源は突き詰めると
「知識」です。知識とは、情報ではなくスキルや経験といった実践知を伴うものです。
たとえばトヨタと三菱自動車の販売台数に差があるのは突き詰めると「知識」の差だと
いえましょう。
鉄鋼やタイヤなどに基本的な違いがある訳ではありません。
企画設計力、デザイン力、製造現場のノウハウ、アフターなどは、すべて「知識」の塊です。
違いはこれらの差といえましょう。これらは長じて組織の強み、卓越性となります。
プロセスから生み出されるのが「顧客価値」です。
顧客は特定の製品を何らかの理由で選択しています。
その理由のことを顧客価値といいます。
「顧客にとっての価値は何か」を問うことが重要なのはそのためです。
事業はこの価値を実現するためにあります。
以上、事業の定義を説明しましたが、これらの定義の実現に反した行動をすれば事業は
成立しなくなります。
その意味で、事業で失敗しないための基本的事項といえます。
顧客が求めている価値は何か、強みは何か、どのような仕組みを構築しているかを
何度も問い、磨いていかなければなりません。
佐藤 等