組織が成功を収めるには、必ず事業の定義を行わなければならない【経営のヒント 701】
「いまや、組織のマネジメントにとって、「何をすべきか」が大きな問題になっている」
『経営の真髄』<上>p.144
「いかにすべきか」ではなく「何をすべきか」が問題になっているといいます。
多くの危機の主たる原因は、やり方が悪く急速に不適応となったのではなく、単に、行っている活動が実を結ばなくなったことによるとドラッカー教授は指摘しました。
つまり「われわれの事業は何か」が問われているということです。
たとえばトヨタは、「クルマの時代から、もっと自由に移動を楽しむモビリティの時代へ」を掲げ、モノではなく楽しむことを事業の中核にすえています。
前提としているものが変化しているという事実です。ここでは、先に挙げたパラダイムシフトの第4-<マネジメントの基盤とすべきものは、財とサービスに関わる技術でも用途でもない。顧客にとっての価値である>が当てはまります。
事業の定義の要素は3つあります。第一に、組織のミッションにしたがっている事業であること、第二に、自社の強みを基盤としていること、第三に、経営環境に適合していることです。
ミッションは、組織が何を意義ある成果と考えるかを決定します。自社の強みは、組織がリーダーシップを維持・強化していくためには、いかなる分野に集中し、卓越性をもつべきかを決めます。経営環境は、組織が何によって対価を得るかを明らかにします。
それはいうほど簡単ではありません。ドラッカー教授の言葉です。
「明瞭かつ一貫性のある有効な事業の定義にたどりつくためには、長い時間をかけた作業と思考、それに実験が必要となる」
「しかし組織が成功を収めるには、必ず事業の定義を行わなければならない」
佐藤 等(ドラッカー学会理事)