意識できない領域に意識を向ける【経営のヒント 706】
「組織の定義がもはや有効でなくなったことを示す兆候が、さらに二つある。」
『経営の真髄』<上>p.162
「人間のつくるものに、永遠のものはない。とくに今日では長く生き続けるものはほとんどない」という永遠の法則の前にどのように行動するのか。
ドラッカー教授は、「体系的廃棄」と「非顧客について知る」ことを挙げました。これ加えてさらに2つあるといいます。
・予期せぬ成功
・予期せぬ失敗
これら2つの有効性の根拠は、すでに起こったことだということです。体系的廃棄は準備活動であり、非顧客について知ることは、ささやかな兆しを知覚することです。
たとえば、コロナ禍で除草剤や散水用のホースが売れたそうです。在宅ワークが増えて自宅の庭が気になった人が増えたということのようですが、あとで言われてみれば「そうそう」となるのですが、当初、関係者も予想していなかったようです。もし、いち早く行動を変えていたら商機を手にした事業者もいたかもしれません。
ドラッカー教授が挙げた予期せぬ失敗の例は、象徴的です。シアーズは1980年代、店頭に証券販売のコーナーを設けました。証券投資が消費財になったと判断したからです。しかし大失敗。アメリカの大衆は消費財とは見なしていませんでした。そこ店舗外に出店し、成功を収めたというのです。
成功すると思って始めたものが、失敗したとき、自分たちに見えていないものは何かを問うことが大切です。非顧客について知ることも、予期せぬことも自分の意識の外側にあることを知覚するための方法です。どちらも意識できない領域に意識を向けることの重要性を教えています。
佐藤 等(ドラッカー学会理事)