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何を成果とするかを決める【経営のヒント 762】

仕事の定義が、知識労働の質の定義を大きく変える。
『経営の真髄』<上>p.339

これまでの投稿で「知識労働の生産性を向上させる方法を6つ挙げました。
①なされるべきことは何かを考えることである
②自らの仕事に責任を負わせることである
③継続してイノベーションに取り組ませることである
④継続して学ばせ、継続して人に教えさせることである
⑤知識労働の生産性は量よりも質の問題であることを理解させることである
⑥知識労働者は、組織にとってコストではなく資本財であることを自覚させることである

今回は⑤の知識労働の質について考えてみたいと思います。この点についてドラッカー教授は、「知識労働の多くは測定されず、主観的な評価にとどまっている」とし、「未経験の新しい課題である」といいます。

しかし、外科医の心臓手術では手術の成功率によって仕事の質が測定されている事例もあります。

このような現実の中でドラッカー教授の次の言葉にはハッとさせられます。

「実は、本当の問題は仕事の質の測定そのものにあるのではない。そもそも仕事が何であり、何でなければならないかを明らかにできないこと、ときには大きく意見が分かれることにある」

大切なことは何を組織(チーム)の成果とするかということです。成果が仕事の定義を決め、何を測定するかを決めます。例えば、ある医薬品メーカーでは既存の医薬品の改善件数を測定し、別の医薬品メーカーは革新的な医薬品を生み出した件数を測定していました。

何を成果とするかを決めるには、意見の対立が避けられません。しかしそれは健全な対立というべきものです。組織やチームの成果がバラバラでは知識労働の方向性は定まらず、生産性も上がらないからです。

知識労働という仕事の質を測定する前提に「われわれの成果は何か」という問いにじっくりと向き合いたいものです。

 

佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)

 

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