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自らをマネジメントする【経営のヒント 172】

『明日を支配するもの』の最終章「自らをマネジメントする」は、数少ないドラッカー博士の個人に焦点を当てた著作です。
いわゆるドラッカー版自己実現の方法の一端が書かれています。
今日の一言からです。

<ドラッカーの一言>
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組織において成果を上げるためには、働く者の価値観が組織の価値観に
なじむものでなければならない。同じである必要はない。だが、共存しえ
なければならない。さもなければ、心楽しまず、成果も上がらない。
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『明日を支配するもの』(ダイヤモンド社)より

前回は仕事の仕方(ワークスタイル)、前々回は強みについて書かせていただきました。これら二つの要素に続く第三の要素としてドラッカー博士が挙げたものが「価値観」です。そして、これら三つのことを理解して初めて、自ら最適の場所で働いているのかがわかると言いました。
それにしても「価値観」という言葉、よく使うのですが実体を説明するのはとても難しいものです。何かを判断するときの基準とでも申しておけばよろしいでしょうか。さて、その「価値観」、個人で言えば、死生観、歴史観、世界観などがあります。一般にこれらは、組織の価値観とはあまり関係ありません。一方で組織の価値観と「共存」しなければならない価値観もあります。例えば、倫理観や仕事観などはその典型です。

ドラッカー博士は、倫理観について面白いことを本書で書いています。
「ミラー・テスト」と呼ばれるものです。
「朝、髭を剃るとき、あるいは口紅を塗るとき、あなたはどのような顔を見たいか」。

これだけです。
端的に言えば「そこに恥ずかしい自分が映っていないか」ということです。
もし、仕事が原因でそう思うなら、倫理観に合わない組織に属していることになります。

仕事観はどうでしょうか。経営トップが働く原動力は、金銭的報酬だと考え、極端な成果主義を行うと、その組織はたぶん一匹狼的な動きが多く、金銭の多寡で簡単に組織を移動してしまう人で溢れるに違いありません。
経営トップが仕事は自分の成長の為にあると考える組織には、おそらく成長志向の人が多く集まってきます。
どちらも組織の価値観と個人の価値観が共有された結果です。

しかし多くの場合、組織の価値観は、不明確です。何を大切なものとして考え、行動するのかが不明確なのです。当初経営トップの価値観をスタートとしますが、時が経つにつれそれは組織の価値観に変化しなければ偽物です。
したがって経営者は、まず組織の価値観の素となる価値観を示し、それを時間をかけて組織の価値観に育てていかなければなりません。
そうすることで価値観を共有できる仲間が組織に集まり、一体感のある経営を実現することができます。もし不幸にしてその価値観に合わない時、人はその組織を去るべきです。
なぜなら「心楽しまず、成果も上がらない」からです。
善し悪しの問題ではありません、合っているか否かの問題です。
繰り返しになりますが、三つの要素を意識して仕事をすることで、成果の大きさが変わってくることを実感できると思います。

佐藤 等

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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