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社会的責任の問題は2つの領域において生ずる【経営のヒント 769】

社会的責任の問題は、企業、病院、大学にとって、2つの領域において生ずる。

『経営の真髄』<上>p.354

 

組織の社会的責任が生じるのは、組織が社会やコニュニティの中に存在するからです。社会や所属するコミュニティは、組織にとっての環境です。環境には重大な関心を寄せざるを得ません。

 

第一の領域は、自らの活動が社会に対して与える影響から生じます。

第二の領域は、自らの活動とは関わりなく社会自体の問題として生じます。

 

2つの領域の性格はまったく異なります。

前者は組織が社会に対して行ったことに関わる責任であるのに対して、後者は組織が社会のために行えることに関わる責任です。

自らの活動が社会に対して与える影響は、社会に貢献するための活動に由来します。材料を調達し、人を雇い、財やサービスを生み出す過程で生まれます。たとえば、材料の調達の過程で搾取的な労働があってはならないし、サービス残業をさせるなど法令を破って雇用してはいけません。このような「クロ」のものはわかるのですが、ニオイや騒音を出したり、交通渋滞を生んだり…。クロではないがグレーな問題は山ほどあります。

 

これら社会に対する貢献活動が社会に与える負のインパクトをできるだけ軽減する責任が求められているのです。

 

もう一つの責任は、自らの活動とは関わりなく社会自体を原因として生じるものです。教育格差の拡大、出生率の低下、生産人口の減少など組織が生み出した問題ではないものに目を向けよとドラッカー教授はいいます。

 

社会という環境から影響を受けざるを得ない問題に対していかに取り組むかが問われています。最も望ましいのは、社会課題の中から自社の強みを生かして事業機会に転換することです。

 

社会的責任に目を向けることは、社会という環境に生きる組織やマネジメントとっては回避できないことなのです。

 

 

佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)

 

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