企業家的スキルとしての戦略計画【経営のヒント 254】
今日も『マネジメント』第10章「企業家的スキルとしての戦略計画」からお伝えします。
<ドラッカーの一言>
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成果は組織の中の有能な人材を具体的な仕事に
割り当てることによって決まる。(中略)仕事は誰かが
行うものである。責任と、締め切りと、成果の尺度を
伴うべきものである。
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『マネジメント』p.162 1973年 ダイヤモンド社より
成果は人が生み出すのです。ドラッカー教授は、(1)売上、利益、顧客数などの直接的成果、(2)顧客価値アップへの取り組み、(3)人事育成の3つの成果を示しています。これらの分野の成果を具体的にあげていくのは、当たり前ですが「人」です。大きな成果は、有能な人財によってもたらされることは容易に理解することができます。
さて本章は、「戦略計画」についての章です。計画を実行するための最大要素が仕事として具体化することです。そのための第一歩が「誰が行うか」を決めることです。この決定により、初めて責任が生じます。
また成果は、締め切りがあって初めて成果となります。さらにその成果の優劣、成否を測定する必要があります。
この3つの点は、当然ながら関連しています。
昨今、できれば責任を負いたくないと思う、責任回避の風潮が蔓延しています。責任という意味の<responsibility>の語源は、respond(応答する)にあります。ラテン語を原義とし、もともと「約束し返す」ことを意味しています。
ある特定の期待の元、誰かに何かを依頼(約束)します。そしてその相手は、依頼(約束)の返答を返します。これが責任の原型です。そこには、返してくれるだろうという期待が潜在しています。誰も返答の無い壁に向かって、物事を頼まないのです。もちろん期待に添えないことも多々あります。
しかし多くの場合、再び依頼することになります。期待と信頼があるからです。
期待が度々裏切られるとその人には、物事を依頼しなくなるでしょう。
応答を期待できない人と判断されるからです。
このように責任は、応答可能性に依存していることがわかります。それゆえ締め切りは重要です。期待に応えるということは、期日が不可欠です。
「何時でもいいから…」という依頼の仕方は、「期待してないから…」と同義です。さらに責任は、どんな応答を返してくれたかという質と量、どれくらいスピーディに返してくれたかという速さなどを評価することが不可欠です。
この人には、どんな仕事を頼めばよいのか、その基礎になるものが成果の測定です。測定が積み重なってくると、期待していいレベルがわかってみます。
重責を担うとは、他人の期待のもと仕事を遂行する質や量を増すことに他なりません。責任回避の風潮は、約束しないこと、期待されないことを意味します。責任の総和が、その組織の成果の総和に比例しているといっても過言ではありません。責任を回避する集合体では、成果は小さいものとならざるをえません。権利ではなく責任を中心に据えるとき、組織は成果に焦点を合わせた活動ができるようになるのです。
佐藤 等