仕事の設計【経営のヒント 779】
マネジメントの仕事は、その職にあるかぎり学び成長できるものにしなければならない。
『経営の真髄』<下>p.9
そのためには、仕事を狭く設計しないことです。ここで大切なことは、「仕事の設計」という意識です。誰が仕事を行うかに関わらず、ある事業を遂行する、または組織を運営するには必要な仕事があると考えることです。
人に任せきりで特定の人しかできない仕事が作られることは原則に反し、仕事の設計が失敗したということになります。誰が行おうが客観的なコトとして仕事が存在するという状況を作り出すことを仕事の設計といいます。具体的には、仕事はいくつかの作業で構成されており、このレベルに分解して考えることです。
ドラッカーは、判断、意思決定が多いマネジメントの仕事にも、この考えを用いました。理由は、「数年ですべてを身につけられるほど狭く設計すると、欲求不満に陥り、さしたる働きもしなくなる。いわば職にありながら引退する。変化、イノベーション。新しい考えに抵抗するようになる」と考えたからです。
これらの原則の前提となる原則に「仕事はすべて、成果を通じて喜びを与えるものでなければならない」があります。
さらに「仕事の喜びが昇進というのでは、仕事に意味がなくなる」といいます。そのような考えでは、ポストには限りがあり、組織が沈滞します。仕事自体の中に喜びの種を見つけられるような挑戦、そこから得られる自己成長という報いこれが原則です。
組織のマネジャーやマネジメントの仕事ぶりを「仕事の設計」という観点から一度、見てみるのも組織の活性化には役立ちそうです。
佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)