人のマネジメント上考慮すべき側面は5つある【経営のヒント 579】
連続して人のマネジメントにおける人がもつ5つの側面に焦点を当てたメルマガをお伝え
しています。
最終回も5つの側面を示した原理の復習からです。
人のマネジメント上考慮すべき側面は5つある―
1.生理的な側面、2.心理的な側面、3.社会的な側面、4.経済的な側面、5.政治的な側面である。
<マネジメントの原理45>
今日は5.の政治な側面についてです。
働くことは、誰かの影響を受けるということです。
組織社会では、人は組織の方向性の中で仕事をし、仕事の指示を受け、人事異動や昇進で
仕事の役割や内容を変えます。
また決められた時間に出社し、誰かが決めた仕事を日程どおりに行います。
つまり働くということで知らず知らずのうちに権力構造の中に身を置いているのです。
ドラッカー教授は、これを政治的側面と表現しました。
組織に属するということは、誰かが決めた職場に配置され、決められた時間に出社し、
誰かが決めた仕事を日程どおりに行うことです。
これを権力構造の中にあるといいます。
組織が行う事業は、社会と無関係に存在することはできません。
事業の価値は顧客が決めます。
事業は仕事というプロセスを通して実現します。
したがって仕事は顧客が決めると表現することも可能です。
現実には、あるべき仕事は顧客のために現場の誰かが決定します。
すべての人がその都度、自由に意思決定して仕事をしていたら大変です。
混乱とコストの増加で事業の継続性を保つことができません。
これを回避するために、誰かが仕事の要素と手順を設計します。
つまり人は、他人が決めたことに従うという権力構造の中にいます。
これは善悪の問題ではなく機能的な問題です。
常にその仕事は効果的に機能するのかを問うことが重要です。
仕事の内容や人の配置は、組織の誰かが決め、それに従うという権力構造の中にあります。
これは組織という機関(道具)を効率よく使うための人類の知恵です。
しかし現代社会は、知識社会であるいわれます。
そのような社会では現場にいる人が最先端のノウハウや経験をもっていることも少なく
ありません。
そのような現場では、指示命令という権力の使い方では機能しません。
組織やチームの方向性を示し、あとは現場において自分で考え、決定し、行動することが
求められます。
そこでは、一定の範囲で選択することが任される領域が責任とともに生じます。
これが知識社会における組織の権力構造の基本です。
人が置かれている政治的側面も変化しているといえましょう。
さて5回にわたり解説してきたように、人は多面的な存在です。
人は、これらの側面のバランスをとりながら働いています。
このバランスは人によって異なります。
それゆえ一人ひとりの力学、すなわちバランスをとっている状況を理解することは
「人のマネジメント」の基本です。
それは、この方法ですべて上手くいくという方法がないことからスタートしなければ
ならないということです。