人を育成することはできない、人は自ら学び成長する存在である【経営のヒント 591】
前回から人のマネジメントに関してまだ触れていない部分をフォローしています。
ドラッカー教授が示したマネジャーの5つの仕事(以下に再掲載)の中から、
これまで動機づけ、コミュニケーションをフローしました。
今日は人材開発についてです。
一般的には人材育成と呼ばれています。
人材開発と呼ぶには意味があります。
<以下再掲>
1.目標を設定する
2.組織する
3.動機づけとコミュニケーションを図る
4.評価測定する
5.人材を開発する
今日の原理からです。
人を育成することはできない、人は自ら学び成長する存在である
<マネジメントの原理100>
この原理の背景に育成という活動の限界が潜んでいます。
もし「育成」が「教育し成長させる」ことを意味するのであれば「教える」ということの
限界を認識して人材育成を行わなければなりません。
スキルや情報は、形式上教えることができますが、情報が真の知識となり、スキルが
身体能力となるのは、本人の努力によります。
「教える」ことと「学ぶ」ことの間に大きな差があります。
「馬を水辺に連れていくことはできても、水を飲ませることはできない」ということわざが
あります。
教育や育成は、馬を水辺に連れていく行為に似ています。
水を飲む=学ぶがどうかは本人次第です。
このことから人材育成とは、人の自己開発をサポートするにすぎません。
つまり座学だけで仕事ができるようになることはないということです。
人材開発という言葉は組織の役割(目的)と関係しています。
組織の役割は、一人ひとりのメンバーが自己成長を目的に自己開発することをサポートする
ことです。
このことは、次のマネジメントの原理につながっています。
第二に、組織の目的は所属する人を成長させることである
<マネジメントの原理4>
組織をマネジメントする者は、最初にこのことを教えなければなりません。
「教育」が有効な場面であり、とても重要です。
しかし組織が人を成長させることはできません。
組織は単なる道具だからです。
この原理を正確に表現すると次のようになります。
組織に所属する一人ひとりは組織という道具を使って、すなわち仕事をとおして自らを
成長させなければならない
<マネジメントの原理4-言い換え>
現代社会では、人の成長と自分の能力の開発は組織における仕事をとおして行われます。
その意味ですべての組織人は、組織が成果をあげる方法であるマネジメントを身につけて
おかなければなりません。
ドラッカー教授が「マネジメントは現代のリベラルアーツ(一般教養)である」といった
意味がここにあります。
次回は自らを成長させるために身につけるべきものは何か。
という観点から考えてみたいと思います。