成果中心の精神【経営のヒント 294】
今日も<ドラッカーの一言>は、『マネジメント』<中巻>第36章「成果中心の精神」からです。学び多き章は、まだまだ続きます。
<ドラッカーの一言>
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他人の仕事の不振を直視しないことは、心の優しさ
ではなく弱さを示すにすぎない。
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『マネジメント<中>』p.101 1973年 ダイヤモンド社
ドラッカー教授は、仕事の不振、つまり人が成果をあげられない、その理由を2つに大別します。一つは人の能力に問題がある場合、もう一つは仕事自体に問題がある場合です。
人の能力に問題がある場合とは、能力を超える仕事に就いているときです。そこから生まれるのは、不安や挫折だといいます。
その場合の対応は、持っている能力(保有能力)を十分に発揮しているか(発揮能力)を確認することです。もしかしたら、能力を引き出す動機づけに問題があるのかもしれません。
保有能力が明らかに足りない場合の対応は、異動です。
それは本人の問題ではなく人事の問題です。もちろんすべての能力を保有して、あるポストに就くことはまれです。足りない能力の伸張基準を高くかかげ挑戦することは重要です。その場合でも誰かが不足する能力等をサポートする必要があります。
保有能力が高まってくるのを待ちます。貢献できる範囲を増やすため、能力を高める。これを人材育成といいます。
異動させずに、そのまま放置していくことは、心の弱さだとドラッカー教授は指摘しています。成果をあげられないことを問題視する組織風土が大切です。仕事と人の能力や強みとの適合性を確認するのはマネジャーの大きな役割です。
さて最後に、仕事自体に問題がある場合です。誰がやってもうまくいかないという場合、それは人ではなく仕事そのものに問題がある可能性が高いということです。ドラッカー教授は「後家づくり」の仕事と呼びました。意外とそのような仕事が放置されているものです。
人と仕事を分離して考える思考は、なかなか身につかないものです。
そのために必要なことは、仕事を客観視する姿勢です。本来仕事は、誰がやっても基本的な作業は同じはずです。「作業」の積み重ねが「仕事」、「仕事」のまとまりが「業務」。「作業」、「仕事」を一つ一つ客観的に見直すことで「誰が」という思考から意識を切り離して考える癖を身につけたいものです。
佐藤 等