目的とミッション【経営のヒント 249】
今回も『マネジメント』第7章「目的とミッション」からお届けします。
今日の一言からです。
<ドラッカーの一言>
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企業の目的とミッションを定義するとき、そのような
焦点となるものは一つしかない。顧客である。
顧客によって事業は定義される。
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『マネジメント』p.99 1973年 ダイヤモンド社より
ドラッカー博士は、顧客の立場から見て、初めて「われわれの事業は何か」に答えられるといいます。顧客の立場とは、顧客から直接答えを得ることを意味しています。決して<顧客のため>に心を読むことではありません。推定は大きな過ちへと導きます。
「顧客が見ているものは何か」、「顧客が考えていることは何か」、「顧客が思っていることは何か」、「顧客が欲しがっているものは何か」など、これらを知ることが現実を知ることになります。これらの答えを直接顧客から得ることがスタートです。
しかし、その前にもう一つ問いがあります。「顧客は誰か」。なぜなら聞く相手が見つからなければ、闇雲に聞くことになるからです。杖という製品のことを若者に聞いたところでまともな答えは返ってきません。では杖のことは高齢者に聞けばいいのでしょうか。脚に障害がある人や医療・介護関係者はどうでしょうか。誰に問うかで「われわれの事業は何か」の答えは変ります。それゆえ「顧客は誰か」という問いは大切です。ここで間違いを犯すとその後の問いと答えが台無しです。
焦点をあわせる顧客が見えてきたら、次に最も大切な「顧客にとっての価値は何か」に取り組みます。その際のサブクエスチョンが先ほどの「顧客が見ているものは何か」、「顧客が考えていることは何か」、「顧客が思っていることは何か」、「顧客が欲しがっているものは何か」などの問いです。顧客の現実を見て、欠けている欲求を充足させることです。その欠けているものを提供するのが組織の役割です。欠けているものを「価値」といい、供給する側の役割として表現されたものを「ミッション」といいます。
「われわれのミッション(事業)は何か」、「われわれの顧客は誰か」、「顧客にとっての価値は何か」は、それぞれ密接に関わりあった一つの大きな問い(われわれの存続意義は何か)の一部なのです。混沌とした時代には、普遍性のある問いに向き合い、時間をかけてジックリと答えを得ることが大切です。
活況のときには取り組みにくいことも、この時代だからこそ時間が準備されていると前向きに考えたいと思います。この時期、これらの問いに集中して全社で取り組むことをお薦めします。
佐藤 等