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政府の再建【経営のヒント 221】

『ポスト資本主義社会』、第8章「政府の再建」はきわめて今日的な課題を扱った章です。
今週日米の首脳会談が行われましたが、
「今日の一言」は両者の差を決定的に印象づけます。

<ドラッカーの一言>
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆! ☆!
これからの数十年は、政治的な決断力、構想力、イノベーション、
リーダーシップが、かつてなかったほど要求される。
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
『ポスト資本主義社会』 1993年 ダイヤモンド社より

リーダーの差を言っていても始まりませんので、ドラッカー博士の3つの「再建原則」をみていきたいと思います。

(1) 機能していないもの、有効性や貢献能力を失ったものを廃棄すること
(2) 機能しているもの、成果をあげているもの、組織の能力を高めるものに集中すること
(3) 半ば成功し、半ば失敗したものを分析すること

とてもシンプルな原則ですね。
これらの原則適用のポイントを記します。
まずは(1)廃棄についてです。
廃棄は再建において真っ先に着手しなければなりません。
廃棄の本質は資源の解放・確保です。
現状は、人材やお金、時間などが犠牲になっています。
何十年も前にあった規制、毎年期待されて陳腐化した補助金、時代遅れの税制などなど廃棄の対象は様々です。そのツケが財政赤字です。
突き詰めると非効率になった活動を止められないことを原因としています。
このことはあらゆる組織についていうことができます。
次に(2)うまくいっているものへの集中についてです。
例えば経済政策の目的は本来シンプルなものです。
一言でいえば経済成長のための環境づくりです。
ばら撒き給付金には、とてもその役割は担えません。
経済成長できる分野、成長させようとする分野への資金投下が未来を切り拓きます。
ホンダのハイブリッドカー「インサイト」が目標の3倍の受注を獲得しています。
他社メーカーを含め環境対応車には潜在的な内需があるわけですから、補助金はこのあたりに回した方がお金の「活き方」が格段に増します。
最後に(3)成功と失敗が交差している分野についての対処の仕方です。
その例としてドラッカー博士があげた分野がNPOなどの社会的セクターです。
アメリカでは市民性と帰属性の回復の期待とともに社会のニーズを満たす組織として世の中に根付きつつあります。
日本でもこの不況期に介護分野への就業人口の移動がみられます。
雇用の調整弁としてではなく本格的に社会セクターが根付くきっかけになるかもしれません。
この分野の課題についてドラッカー博士は「社会セクターによる市民性の回復」として次章を設けています。
ドラッカー博士は、ここで述べた3つの原則は政府ばかりでなく、あらゆる組織で必要なことであると明言しています。
再建というネガティブな言葉ではありますが、本質はイノベーションへの取り組みそのものです。
大変化の時代にあって必要な3つの原則です。
今一度、確認し、実行に移したいものです。

佐藤 等

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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