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組織の社会的責任【経営のヒント 218】

今回は『ポスト資本主義社会』、第5章「組織の社会的責任」からお伝えします。
ご存知のように、偽装問題など企業の社会的責任が追及される場面が多くなってきています。今一度わが身を振り返る機会にしたいものです。
まずは今日の一言です。

<ドラッカーの一言>
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目指すべきは、組織に働く者全員を責任ある存在にすることである。
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『ポスト資本主義社会』 1993年 ダイヤモンド社より

組織の社会的責任は、いくつかの要素で成り立っています。
第一に、組織が使命を果たすことです。
特定の使命を果たすことは、自らの力の及ぶ範囲においてのみ行うことが可能です。
能力を大きく超えることを中心におくと、成果を出すことが難しいばかりではなく、結果として使命を果たすことができません。
したがって第二の要素は、組織にその解決能力があることです。
使命と能力は、社会的責任を果たすための両輪です。
ドラッカー博士は、この二つの関係を次のように先鋭的に表現しています。

「組織は、一つの使命に関してのみ有能であり、そのように専門化している場合においてのみ成果をあげるだけの能力を保持する」。

第三の要素は、一人ひとりの行う仕事が責任に裏打ちされていることです。
二つ目の要素である組織の能力は、結局最後は人に行きつきます。
人が組織の能力をつくり、組織に能力を蓄積させます。
一方で人の能力は、一人ひとりの仕事を通してしか磨かれません。
能力は、本を読んだり、セミナーを聞いたりして得られるものではありません。
そこで得られるのは情報です。情報を行動に、つまり仕事に生かしてはじめて成果があがり、その結果として能力が上がります。
仕事を行うとき忘れてはならないのが、仕事に対する責任です。
責任が一人ひとりの貢献を引き出すといっても過言ではありません。

偽装問題などという低レベルの社会的責任ではありません。
社会の役に立とうという組織の強い意思の表明の背景に、組織に属する一人ひとりの仕事の責任があることを忘れないようにしたいものです。
そして、一人ひとりに責任を持たせることが経営者の大切な役割です。
経営トップ自らが意識を高め、自ら率先して責任を負う姿勢を見せて、はじめて組織の一人ひとりの意識が喚起されます。
「先ず隗より始めよ」ですね。

佐藤 等

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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