ポスト資本主義社会【経営のヒント 216】
新年明けましておめでとうございます。激動の2009年が始まりました。
こんなときだからこそ、新しい時代の扉を力強く開け放ちたいものです。
さて昨年末から引き続き『ポスト資本主義社会』を読み進めています。
第三章は「資本と労働の未来」です。
では、今日の一言です。
<ドラッカーの一言>
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先進国にとって、成功を約束する唯一の長期的視点に
立つ政策は、製造業の基盤を肉体労働から知識に
転換することである。
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『ポスト資本主義社会』 1993年 ダイヤモンド社より
ドラッカー博士のこの言葉は、昨今の雇用不安の本質を15年以上前にズバリと予見したものです。自動車や電機産業で派遣切りが話題になっていますが、本質は派遣という制度だけにあるわけではありません。そもそも製造業の現場が労働者の数に多くを依存しているという事態をドラッカー博士は問題視しています。
「ハイブリッドカーを安くつくれ」。
ホンダのホームページの上半分に大きく表示されるメッセージです。
グリーンマシーンへの道と題して針路を明確にしています。
世界最高峰の液晶技術で突き進んできたシャープも、最近のテレビコマーシャルではエネルギー企業といい出しました。
ソーラ発電を核に企業のあり方を変えようとしています。
どちらも知識や知恵を結晶化させなければ実現できないものです。
単に労働者の数が多いとか少ないとかいう問題ではありません。
いまや高級車ジャガーがインドのタタ・モーターズに買収される時代です。
これらの産業は成熟期を迎え、そもそも質的な転換が求められているのです。
これまでの製造業では、この章のテーマどおり大量生産を前提にして「資本と労働」の生産性が問われていました。しかし、いまや知識の生産性、つまりその保持者である知識労働者の生産性が問われる時代です。
そんな時代に短期の派遣社員では知識の生産性の向上には限界があります。
知識は個人と組織に蓄積していくものです。長く組織に居てこそ得られるものです。
2007年にはユニクロが数千名単位で非正規社員を正規社員化しました。
非正規社員の場合、優秀な人でも結局は雇用の安定を望み離職されてしまう。
これは当社にとって損失である。人件費の上昇よりも、良い人材を確保することによる業績アップの方が、将来的には利益確保につながるとは、柳井社長の弁です。
知識社会に先駆けた動きです。
一方で派遣を含むパート・アルバイト、契約社員などの非正規雇用者は労働人口の3分の1を占めています。今やこれらの人材なしには組織活動はできないといっても言い過ぎではありません。いかにして生産性を上げるか、それが大きな課題です。
この際に参考にすべきは、非営利組織の経営です。
無償もしくは無償に近いボランティアがなぜ嬉々として働くのか。
社会や組織への貢献感や承認感が働く意欲を高めているからです。
ボランティア以上にお金を手にしているのに、なぜ個人や組織が活性化しないかを解決するヒントが見えてくると思います。
知識中心の社会とは、そこに働く者が知識と能力を磨き、自ら組織に貢献すべく自らをマネジメントし、最高の成果を出すべく日々行動する社会です。
「知識への転換」は、まず一人ひとりがスタートだということを今一度確認して新年のスタートを切りたいものです。
佐藤 等