断絶の時代【経営のヒント 198】
『断絶の時代』の最終章にこんな文章があります。
この文章から皆さんはどのようなことを想起しましたか。
私たちに向けられた40年前に書かれた警鐘です。
<ドラッカーの一言>
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知識探求の優先順位の決定は科学や事実によって行うことは
できない。価値観に基づく決定として、未来に関わる著しく
主観的な評価として行わざるをえない。
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エターナル版『断絶の時代』1969年 ダイヤモンド社より
私は、直ぐに地球温暖化、環境問題を思い起こしました。
この文章の前にこんな文章があったからです。少し長いのですが引用します。
「政府や社会に関しては、膨大な量の思考、知識、創意が必要とされている。
なぜならば、自然は変わらなくとも、人間環境としての社会、コミュニティ、政府は、われわれが理解するよりも早く変化しているからである。知識の探求にあたっての優先順位はどうあるべきか、訓練と経験と実績のある貴重な人材はいかなる仕事に向けるべきか、それを誰が決めるか。しかも優先順位の結果は重大である。
経済的資源の配分をはるかに超えるリスクを伴う」。
この記述には、一箇所誤りがあります。お氣づきでしょうか。
「自然は変わらない」という部分です。
変わらないハズのものが変わった。有史以来最大のシフトが起こりました。
兆候はありました。しかし優先順位を間違ったのです。
経済という手段を目的にした社会運営のツケが今来ています。
私たちは今、経済的資源配分をはるかに超えるリスクを負っています。
世界最大の経済大国は、未だに経済界からの圧力で政治的判断に躊躇しています。
経済という「事実」により優先順位をつけているからです。
私たちの子供たちの未来に関わる決定は価値観に基づいて行わなければならないという、40年前の警句を無視してしまったのです。
一国の例を挙げましたが、このことは私たち自身についてもいえます。
先日お米の消費が上昇傾向に転じているというニュースに接しました。
ご存知の小麦の高騰による影響です。
遠くから物を運び、好きなものを食べ、身近にある物の消費が進まない。
高コスト社会だということを思い知らされるニュースです。
値上がり自体は好ましからざる事態なのですが、当たり前基準に近づいている象徴的な出来事に不思議と不快ではない自分がそこにいました。
誤りを認めることは、決して自らの価値を下げることにはなりません。
むしろ逆です。早く認め、決め、行動することです。
未来を変えるために、今日決め、今日行動することです。
佐藤 等