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途上国の貧困【経営のヒント 183】

『断絶の時代』第6章のテーマは、「途上国の貧困」です。
グローバル化の一側面として語られています。
かつて私たちの北海道にも北海道開拓使とよばれる経済開発をミッションの一つとする政府機関がありました。北海道の後進性が背景にあったことは、言うまでもありません。当時の北海道が現在の途上国と呼ばれている国と比較して、どうであったかを知る由もありませんが、後進性の名残は北海道開発庁を経て、国土交通省北海道開発局となり現存しています。
その間私たちの日本は、途上国から先進国の仲間入りをしました。
今日の一言は、一つの国に対する経済援助のあり方を問うものですが、地方と中央の格差という現代的課題にも十分説得力をもつものです。

<ドラッカーの一言>
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経済発展の本質は貧しい人たちを豊かにすることではなく、
貧しい人たちの生産性を高めることである
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エターナル版『断絶の時代』1969年 ダイヤモンド社より

国や地域間の格差を埋めるため「援助」を行うと何が起こるでしょうか。
ドラッカー博士は、援助の名で行われる資金提供は、成果の大きなところではなく、必要性の大きなところへ向けられ、依存を生み出すと指摘しています。
本来援助は、浪費ではなく投資でなければなりません。
言うまでもなく投資は、国や地域や組織の生産性を向上させます。

この生産性に関して、ドラッカー博士は、この著書で偉業を成し遂げた日本の二人の実業家を世界に向けて紹介しています。
三菱という企業集団を作り上げた岩崎矢弥太郎。
600を超える会社と一橋大学をはじめとした名門校の設立に尽力した渋沢栄一。
この二人の論争を著書で紹介しています。お金か人か。
お金を支持した岩崎、人の大切さを唱えた渋沢。
もちろんバランスの問題なのですが、資本の生産性と人の生産性のどちらを強調するかに分かれて二〇年間も論争を繰り広げたそうです。

ドラッカー博士は言います。
「岩崎と渋沢は、豊かな日本ではなく創造力のある強い日本をつくろうとした」と。
現在日本は、創造力豊かな世界に冠たるものづくり大国です。
翻って我が北海道はどうでしょうか。道民総生産は、19兆円程度と日本の4%を占める規模です。
世界的にみてもニュージーランドよりも多く、デンマークと同じくらいの規模です。
もっと自信を持ってもいい十分な規模なのですが、毎年の経済課題には、付加価値(生産性)の低さが指摘されます。
要は、もっと創造力のある地域に…ということです。
北海道は、もはや貧しい地域ではありません。
しかし地方と中央の格差が指摘される昨今、今一度過去の立志伝中の実業家たちが考え、実践したことを省みる必要がありそうです。
補助金が減ったと嘆くのではなく、生産性を高める工夫をする必要があります。
とりわけ生産性を高めるための人への投資については、計画的・集中的・累積的に投資を行う必要があります。
札幌農学校から未来を創る幾多の人財が排出されたように。

佐藤 等

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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