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経済のグローバル化【経営のヒント 182】

『断絶の時代』第5章は、「経済のグローバル化」がテーマです。
グローバル化は、今でこそ当たり前になりましたが、この本が書かれた1969年当時は、この言葉が出現したばかりでした。
ドラッカー博士は、グローバル化の原因の一つを次の言葉で言い表しました。

<ドラッカーの一言>
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
電子メディアは物を伝える。経済を伝える。
グローバルなショッピングセンターを生み出す。
新しいコミュニティーを生み出す。
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
エターナル版『断絶の時代』1969年 ダイヤモンド社より

この言葉が発せられた1969年は、インターネットなど存在せず、わずかにその影があっただけです。実は、後にインターネットの母体となるアーパーネットの運用が開始されたのがこの年でした。
ドラッカー博士が発した「電子メディア」は、衛星通信のことであり、今ではオールドメディアとなったテレビやラジオの音声・映像が世界から届く世界を意味していました。

しかしこの言葉は、見事に本質を突いています。
私たちは、新しいメディアが物や経済を伝えることを知っています。
古くは印刷革命に始まり、新聞、電話、ラジオ、テレビ・・・当時はどれもニューメディアでした。
しかし「グローバルなショッピングセンターを生み出す」という予言にも似た言葉は、未知のものでした。
アマゾンドットコムに代表される時空を越えた情報のやり取りには、驚くべきものがあります。
アメリカからインターネットで中古の本を購入できる時代なのです。
ドラッカー博士が見たメディアは、確かに衛星を経由して伝えられるテレビの映像だったのかもしれません。
しかしその本質は、さらに先までを見通すものだったのです。
あらためて慧眼に脱帽です。

ドラッカー博士の慧眼を磨く砥石を示すエピソードを最近聞きました。
世界的なナレッジ経営の大家である野中郁次郎先生が最近ドラッカー博士の書斎を見せてもらったそうです。
驚くことにその大半は、歴史書であったそうです。
明日を見通すその眼の一部は、間違いなく歴史から学んだことで形成されています。
興味の範囲は、時代はもとより、洋の東西を問わず、宗教、技術など分野を問わず広範囲に及んでいます。私には、とてもとても真似できることではありませんが、せめて過去から学び明日を観る眼を鍛える姿勢は身につけたいものだと思っています。
例えば「すでに起こった未来」とう言葉があります。
すでに起こっていること=過去から未来を導き出すという有力な、私たちにも使える道具をドラッカー博士は、私たちに与えてくれました。
まずは、そんなところから始めたいものです。

佐藤 等

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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