経済政策の転換【経営のヒント 181】
『断絶の時代』第4章は、「経済政策の転換」がテーマです。
この章で語られている転換すべき政策は、産業政策であり、
(1)労働力の移動、(2)経済のグローバル化、(3)新技術革新
という三つの観点から述べられています。
ポイントは、生産性の高いものへのシフト、過去ではなく未来へのシフト、技術進歩への積極的対応が今後求められるということです。
今日の一言は、労働力の移動に関して述べられたものです。
<ドラッカーの一言>
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知識労働では、仕事を楽しみ、かつ仕事に
誇りにもちつつ、生計を立てることができる。
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エターナル版『断絶の時代』1969年 ダイヤモンド社より
現在、知識労働者は先進国の労働者の半数以上を占めています。
人より10倍早く荷揚げを行うことが出来る人はいないように、肉体労働で生産性の差が10倍開くことは、ほとんどありません。
その差は、せいぜい2~3倍ではないでしょうか。
ところが知識労働の生産性の差は、10倍はおろか何百倍もの差がつきます。
例えば、ホームページを作るという仕事の生産性を考えてみましょう。
出来上がりの質的な差は人によってかなり違います。
さらに当然ですが費やした時間にも差があります。
簡単に生産性で2~3倍以上の差がつきます。
それが知識労働の特性です。
ドラッカー博士は、「断絶の時代」においては知識労働者の生産性が決定的な意味を持つといいます。
「生産性の低い産業に国民をとどめる政策」という著書での表現は、「生産性の低い仕事に社員をとどめる施策」と置き換えて読むことができます。経営者は、生産性の高い仕事に社員をシフトさせる責務を負っています。当然ですが生産性の低い仕事では、生計を立てることが難しくなります。また仕事の生産性が低いままだと世の中からなくなる、あるいはより人件費単価の低い人たちにシフトする可能性が高く、誇りを維持しにくいのも事実です。さらに生産性の低い仕事は、知識を活用する自由度が低いことを意味しており、工夫の余地が少なく楽しんで仕事をする機会を奪います。
知識労働者は、費用の塊ではなく価値を生み出す資本だとドラッカー博士はいいます。資本が生み出す価値を高める行動そのものが仕事の楽しさを増幅させ、その結果増えた顧客価値=付加価値でより多くの分配を手にすることができます。顧客価値を高める行動は、顧客の感謝の積み重ねを通じて社会貢献に結びつき、仕事の誇りを高めます。
知識労働者という資本は、減るどころか使えば使うほど輝きを増し、個人の幸せと顧客の喜び、さらに社会の役割を果たすものだということを理解して経営に取り組みたいものです。
佐藤 等