明日を支配するもの【経営のヒント 156】
今日から『明日を支配するもの』の第一章に入ります。
前回も触れましたが二一世紀は、「新しい現実」のもとに展開されています。
1995年にマイクロソフト社がWindows95を世に出しました。その前の10年とその後の10年がまったく違った世の中になっていることは、説明の余地がありません。Windows95の登場を契機にインターネットが普及するという社会の前提が変わったためです。今日のドラッカーの言葉です。
<ドラッカーの一言>
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マネジメントのような社会科学において最も重要なことは、
何を前提とするかである。しかもその前提とするものが
変化するということである。
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『明日を支配するもの』1999年
マネジメントのような社会科学では、前提や仮定がそのままパラダイム(支配的な一般理論)となる、とドラッカー博士が言うように、<前提・仮定の変化⇒パラダイムの変化⇒新しい現実>という図式が成り立ちます。したがって「新しい現実」をとらえるためには、私たちが何を前提とするのかということが重要になります。インターネットが私たちの目の前に現れたとき、eコマースという言葉を知りませんでした。ビジネスの前提としてインターネットを意識した一握りの人がこれをビジネスに変えました。鉄道の存在を前提に不動産業が隆盛を極めたように、今、インターネットの存在を前提にビジネスが変わりつつあります。
二一世紀に入って日本の都市銀行もeコマースに取り組むようになりました。
ここ数年で私たちの常識が変わったのです。インターネットという物理的なものに大きな変化はありません。まさに私たちの認識が変わったのです。
こうして私たちが前提として受け入れていたものがこの数年で大きく変わっています。
ドラッカー博士がこの著書で注意すべき「前提」として指摘しているものを2組7つあげます。
<組織運営上の前提>
(1)マネジメントとは企業のためのものである
(2)組織には唯一の正しい構造がある(あるいはあるはずである)
(3)人のマネジメントには唯一の正しい方法がある
<事業経営上の前提>
(4)技術と市場とニーズはセットである
(5)マネジメントの範囲は法的に規定される
(6)マネジメントの対象は国境で制約される
(7)マネジメントの世界は組織の内部にある
もうお氣づきだと思いますが、これらの前提はすでに変わっています。
本書ではこれらを精査して、「新しい現実」をしっかりと認識しようとしています。
「古い現実」は、古い前提に端を発しています。「新しい現実」を認識できないのは、脳みそが古い前提を基礎としているからです。
この機会に是非、この辺りのチェックを行い、今世紀を生き抜くために必要な「常識」を身につけようではありませんか。
佐藤 等