世のため人のために貢献する【経営のヒント 651】
今回も「どのように人間学を学ぶのか」という観点からお伝えしたいと思います。以下に示すように、昨年後半から取り組んでいる<人間学マップ>の3つの大項目の一つです。
<人間学マップの項目>
(1)なぜ人間学を学ぶのか
(2)どのように人間学を学ぶのか
(3)人間とは何を学ぶのか
(2)「どのように人間学を学ぶのか」についてこれまで人と書物から学ぶことについて何回かに分けて書いてきました。「学ぶ」という言葉は、何かの情報を手にするという面とその情報を身体能力として身につけるという側面があります。人と書物から学ぶといった場合、前者の側面に重きが置かれています。
ドラッカー教授の次の言葉は、そのことを表しています。
知識は、本の中にはない。本の中にあるのは情報である。知識はそれらの情報を仕事や成果に結びつける能力である。
『創造する経営者』
能力化する過程で重要なことは、仕事をとおして身につけるということです。人間学では「時処位の限定」という言葉があります。「いまここその役割で」という意味です。その人が能力を身につける機会は、将来のどこかではなく、常に「いまここその役割で」ということです。
どんな仕事でも真剣に取り組むことで仕事をとおして能力が高まり、その結果として人間的な成長に結びつくのです。
一灯照隅という言葉は、「時処位の限定」の考え方をよく表しています。一灯照隅を説明した安岡正篤先生の言葉です。
「賢は賢なりに、愚は愚なりに、一つのことを何十年と継続していけば、必ずものになるものだ。別に偉い人になる必要はないではないか。社会のどこにあっても、その立場立場においてなくてはならぬ人になる。その仕事を通じて世のため人のために貢献する。そういう生き方を考えなければならない」。
ドラッカー教授の「貢献」という言葉にも、同じ考え方が含まれています。
貢献に焦点を合わせることによって、自らの狭い専門やスキルや部門ではなく、組織全体の成果に注意を向けるようになる。成果が存在する唯一の場所である外の世界に注意を向ける。
『経営者の条件』
「世のため人のために貢献する」とは、組織の外の世界で成果をあげることです。自分のためではなく他人のために働くことで真の学びが身につくのです。学びは、仕事という実践をとおしてしか身につかないのです。心して日々の仕事に臨みたいものです。