「私は知識労働者なの?」【経営のヒント 764】
テクノロジストこそ、先進国にとって唯一とも言うべき競争力要因であり続ける人たちである。
『経営の真髄』<上>p.342
これまでの投稿で「知識労働の生産性を向上させる方法を6つ挙げましたが、今日は、「私は知識労働者なの?」という問いに答えます。
①なされるべきことは何かを考えることである
②自らの仕事に責任を負わせることである
③継続してイノベーションに取り組ませることである
④継続して学ばせ、継続して人に教えさせることである
⑤知識労働の生産性は量よりも質の問題であることを理解させることである
⑥知識労働者は、組織にとってコストではなく資本財であることを自覚させることである
知識労働者は知識労働のみに携わる存在ではありません。実際には、きわめて多くの知識労働者が、知識労働(ナレッジワーク)と肉体労働(マニュアルワーク)を行っています。
脳内動脈瘤の切除手術の例をドラッカーは挙げました。手術は、高度の理論的な思考と判断をようする知識労働です。しかし作業自体は、迅速性、正確性、規格性が要求される反復的な動作からなる肉体労働です。
もう一つ挙げた例は事務員とコンピュータのオペレーターです。これらの仕事は、少なくとも読み書きという、経験では身に付けられない知識を必要としています。その業界や社内には特有の知識が必要です。彼らの仕事は、肉体労働中心であって知識労働の部分は小さいかもしれません。しかし知識が核心的に重要です。それなしには肉体労働を行うことはできないからです。
このような仕事をする人をテクノロジストと呼び、教育訓練が決定的に重要であることを指摘しています。そのことが生産性の向上に不可欠だからです。知識は付加価値の源泉です。付加価値の総計であるGDPが伸び悩む日本にはとりわけ重要です。
まず、自分は知識労働者なのだとの自覚からスタートすることです。そのうえでどうすれば、知識の生産性を高められるかを問い続けることです。生産的であることが、自分の居場所を自分で定め、社会との絆を確保する一つの重要な基準となります。
佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)