コミュニケーションは情報ではない【経営のヒント 838】
コミュニケーションにとって、主役は知覚であって情報ではない。
『経営の真髄』<下>p.118
ここまでドラッカーのコミュニケーションの4つの原理を取り上げてきました。
①コミュニケーションとは知覚である
②コミュニケーションとは期待である
③コミュニケーションとは要求である
④コミュニケーションは情報ではない
最終回は、情報についてです。コミュニケーションは、人と人とのパイプラインのようなものです。それぞれのパイプラインの直径が異なります。情報はその中を流れています。
パイプラインの直径は、コミュニケーションの当事者間の「経験の共有度」に依存します。たとえば、仕事で同じ経験を積んだ者同士であれば、「あの案件のあの場面」という一言で多くの情報が流通するかもしれません。
ドラッカーは「情報とは記号である」といいます。記号には、記号表現と記号内容・意味があります。1か月前に、日本の大工が伝統的に使っていた道具「墨壺」について書きました。
「墨壺」あるいは「スミツボ」は「記号表現」です。この道具を使った経験や見た経験がなければ、この記号(情報)を聞いても何のことかさっぱりわかりません。
記号の内容・意味を知るには、使ったことがあるか、少なくとも現物や写真などで見たことがある必要があります。そうでなければ、何も伝わりません。
大工の道具は目に見えますが、マネジメントは、目に見えないコンセプトという「道具」を用いて行います。成果、事業、強み、仕事の設計、チーム、貢献など、すべて目に見えないコンセプトを道具として用いてマネジメントを行います。それゆえドラッカーは、情報はマネジャーの道具であると述べました。
これは、目の前の人と仕事をする際の盲点です。つまり目の前にいる人の経験を想起しながら情報を変えなければならないことを意味します。伝わっているかどうか、つまり知覚できているかどうかを常に意識しながら、コミュニケーションを行いたいものです。
佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)