知識社会の競争性【経営のヒント 674】
ネクスト・ソサエティとは、組織にとっても、一人ひとりの個人にとっても高度に競争的な社会となる。
『経営の真髄』<上>p.68
競争的社会になる理由としてドラッカー教授は、ネクスト・ソサエティの特性を3つ挙げました。
(1)知識は資金よりも容易に移動する。それゆえ境界のない社会となる。
(2)学習機会が万人に与えられるがゆえに、上方への移動が自由な社会となる。
(3)生産手段である知識を誰もが手に入れられるゆえに、成功と失敗が併存する社会となる。
ドラッカー教授は、このような社会を知識社会と呼びました。経済的な格差が現代社会の大きな問題になっていますが、根底にあるのはこの知識社会の競争性です。優勝劣敗がはっきりする時代に私たちは生きているということです。
この競争性を加速させているのが、IT技術です。瞬時に情報は世界を駆け巡ります。情報の格差は、この数十年で大きく縮みました。情報は知識そのものではありません。その情報を仕事や成果に結びつける能力が知識です。知識とは何かを生み出す能力のことです。
学習機会は、情報を知識に変え、組織や個人の存在価値を再構築します。知識には鮮度があります。陳腐化しやすいものとそうでないものもあります。体系的な知識もあれば、断片的な知識もあります。つまり知識という能力をどのように獲得し、維持し、磨き上げるかには、戦略が必要だということです。
組織の知識は、強みと言われます。組織に所属する多くの人に身についているもので過去の活動の結果として蓄積していったものです。狙いをつけて強みを強化することができます。
個人の知識もやはり活動の結果として獲得されるものです。その過程で知識は、ものごとの判断基準としての見識に育ち、さらには意思決定の礎となる知識、すなわち胆識へと練り上げられていきます。こうして身体能力として身についた知識だけが実践で役立ちます。
あなたは、どのような知識をどのような方法で獲得しようと考えていますか。5年、10年という単位で考えてみましょう。
佐藤 等(ドラッカー学会理事)