数年間で体感した生の記憶を回想します【経営のヒント 438】
『傍観者の時代』の最終章の第15章は「お人好しの時代のアメリカ」です。
ドラッカー教授自身がアメリカ上陸後、数年間で体感した生の記憶を回想します。
<ドラッカーの一言>
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部族主義は不況時代にピークに達した。
コミュニティと所属が重視されたためだった。
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『傍観者の時代』p.354 1979年 ダイヤモンド社
現代においてもアメリカは部族主義(トライバリズム)の国だといわれています。
それは大統領選において黒人やヒスパニックの動向が注目されることからもわかります。
現代はドラッカー教授の記憶よりも部族主義が増幅された時代といえるかもしれません。
前回記したように、ドラッカー教授は「アメリカの社会としては不況は天災だった」と述べました。
その際に、社会の崩壊を支えたものがコミュニティでした。
しかし一方でコミュニティの地位が上がることは「部族的なもの、郷党的なもの、地域的なものが
強化されることを意味」しました。
不況下のアメリカは、大恐慌前の1920年代のアメリカよりも、反ユダヤ、反カトリック的になったと
ドラッカー教授は感じました。
それは親ユダヤ的となり親カトリック的となることをも意味していました。
その状況に新参者の教授は驚くばかり。
理解不能とし「狂気の沙汰」とイギリスの新聞『ファイナンシャル・ニュース』の発行人
ブレンダン・ブランケットに告げました。
しかし彼の感性は「いや、もっと悪い。狂気の沙汰ならば治しようもある。しかしあれは部族主義だ。
結局は社会そのものを麻痺させる」と評しました。
2012年に出版された『超大国の自殺-アメリカは2025年まで生き延びるか?』
(パトリック・J・ブキャナン著)にもアメリカの部族主義は取り上げられ
衰退の遠因となっていることを伝えています。
ドラッカー教授が観た部族主義は、その後も社会の麻痺の要因の一つになっていたことがわかります。
国民の遺伝子は時代を超えて大きな影響を及ぼすものです。
佐藤 等