必要な技術をもつ組織とどのように連携し、マネジメントしていくか【経営のヒント 684】
かつて産業と技術は直接結びついていました。特有の技術が特定の産業には必要ということです。そのことを示すドラッカー教授の言葉です。
第五に、あらゆる技術がそれぞれの産業に属し、逆にあらゆる産業でそれぞれに特有の技術を持つとされた。
『経営の真髄』<上>p.91
この常識も1970年代頃から通用しなくなってきました。つまり、特定の産業に必要な特有の技術というものがなくなってきつつあります。新しい技術は、自分が属している産業分野以外から越境して来るようになってきました。
ドラッカー教授が例示しているように、電話会社が使っているファイバーグラスはガラスメーカーからもたらされた技術でした。そして今やファイバーグラスの中を暗号資産が流通しています。カメラメーカーの競合が携帯電話であったようなことが普通に起こる時代です。
技術の越境という現実は、経営方法の抜本的変革を迫ってきます。すなわち、必要な技術をもつ組織とどのように連携し、マネジメントしていくかが問われています。
パートナーシップ、合弁、提携、少数株式参加、ノウハウ契約など様々な方法を駆使して、連携を図ることが求められています。ドラッカー教授の事業の定義を思い出してください。
事業とは市場において知識という資源を経済価値に転換するプロセスである。
『創造する経営者』
この言葉を基に考えると、事業に必要な技術という知識資源の一部を外部から調達する能力が問われていることがわかります。またその技術に依拠した事業プロセスをいかに組み込むかが重要なポイントであることがわかります。
わが社に必要な技術は何かという観点は、事業が生み出す価値に直結しています。今一度、確認しておきたいポイントです。
佐藤 等(ドラッカー学会理事)