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実践するドラッカー/思考編【経営のヒント 448】

今日も『実践するドラッカー/思考編』から一言です。

≪ドラッカーの一言≫
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われわれは、組織が一人ひとりの人間に対して
位置と役割を与えることを
当然のこととしなければならない。
同時に、組織をもって自己実現と成長の機会と
することを当然のこととしなければならない。

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『実践するドラッカー思考編』p.46
原典-『断絶の時代』p.266

この言葉は、ドラッカー・マネジメントの根幹に触れる大切なものです。
しかも主語が異なります。
第一に「組織が一人ひとりの人間に対して位置と役割を与える」こと、
第二に「そこに属する一人ひとりは、組織をもって(組織という道具を使って)
自己実現と成長の機会とする」ことが示されています。

「組織が一人ひとりの人間に対して位置と役割を与える」とはどういう意味でしょうか。
一言補います。
「社会における位置と役割を与える」、つまり位置とは組織に属すること、
役割とは組織内における果たすべき機能のことです。
「●●商事で営業部長をしています」などは端的な表現例です。

組織における仕事が、社会における位置と役割を提供しているということが出来ます。
位置と役割を得ていない状況とは、失業状況です。
失業は生活の糧を得られないだけではなく社会との絆の喪失を意味します。

ドラッカー教授は、第一次世界大戦後における荒廃したヨーロッパや
1930年代のアメリカの大恐慌を肌感覚で知っていました。
人間が社会から疎外される状況を見て組織に社会との絆を結ぶ役割を与えました。
組織という道具が仕事を通して、そこに参加している一人ひとりに位置と役割を与えるという
責任が、経営者にはあるのです。
そのような役割を自覚して経営を行わなければなりません。

また社会における位置と役割を得るということは、社会において
組織が特有の使命を果たすことを前提としています。
使命(ミッション、存在意義など)が定まらなければ、位置と役割は不明確なものになるでしょう。
組織が使命を定めることの重要性はここにあります。
掲げる使命が異なれば仕事は変わり、一人ひとりの位置と役割も変わるのです。

さて第二に、組織はそこに参加する者にとって自己実現や成長の機会であるとの指摘は
どのように考えればいいのでしょうか。
社員やスタッフ、あるいは役員を含めて組織という道具を用いて
自らの成長の機会とする責任を有していることを意味します。

経営幹部はそのことを全社員に伝え、共有していかなければなりません。
組織という道具の使い方(マネジメント)に習熟しなければならないのは、
経営トップばかりではありません。
各階層のマネジャーはもちろん、すべての知識労働者は、
道具としての組織の使い方に習熟し、成果をあげなければなりません。

マネジメントを習得する意味がここにあります。
組織という現代の道具は、かつて文明が興った頃の灌漑のための設備や
ルールという道具と同じレベルで重要です。

「組織を道具と見る思考習慣」が大切です。道具であるとの認識が目的を鮮明にさせ、
道具の使い方の工夫につながります。

今日の一言は経営の常識の大転換となる可能性があるものです。
ジックリ自分の中に落とし込みましょう。

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<実践のための問い>

自分が成長するために組織という道具を使って何ができるか?
アイディアを挙げて下さい。

佐藤 等

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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