経済成長率(GDP)【経営のヒント 508】
中国の経済成長の鈍化が伝えられて久しい。ときに15%を超え(1984)、
その後も10%前後をキープしていた経済成長率(GDP)も2015年以降7%を割り込みました。
<ドラッカーの一言>
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経済発展は万能ではない。むしろ危険でありうる。
経済発展とは成長であり、成長とは秩序あるものではない。
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『断絶の時代』p.121
1979年の米中国交正常化後、鄧小平が主導し市場経済の導入により、
中国は経済発展というコンセプトを強く意識するようになりました。
その後、GDPを8年で2倍にするような成長軌道にのせました。
ドラッカー教授は「特に経済発展に向かって離陸する時期が危険である」と断じました。
危険はやって来ました。
秩序の乱れが端的に現れたのが民主化を叫ぶ学生を弾圧した天安門事件(1989)です。
西側経済封鎖により経済は大打撃を受けます(経済成長率は2年間4%台)。
その後、中国は民主化の動きに過度に敏感になり、現在に至っています。
一方、最近の経済成長の低迷は人口構造の変化だと言われています。
中国では人口ボーナス期が過ぎ、?小平時代に始めた一人っ子政策により
2012年から労働人口が減少に転じました。
2016年一人っ子政策の転換を決めましたが、少子高齢化社会にまい進しています。
その意味で中国経済の減速は「すでに起こった未来」だったといえましょう。
中国は市場開放後、現在までで実質GDPを約30倍に伸ばしました。
ちなみに日本はこの間 2倍に届きません。日本はGDP世界2位の位置を中国に明け渡します(2010年)。
さてドラッカー教授は「特に経済発展に向かって離陸する時期が危険である」としましたが、
「特に経済発展の減速期も危険である」といえないでしょうか。貧富の差の拡大です。
OECD発表のニジ係数は中国が0.61、日本は0.336、米国0.38となっている(2010年)。
2012年以降の減速期ではさらなる拡大が見込まれています。
減速期には失業問題や職に就けない学生の問題が急浮上します。
実に10億人が貧困層ともいわれる中国、そのエネルギーは三国志の時代の幕開けとなった
民衆蜂起黄巾の乱にも匹敵するものではないかと推察しています。
ドラッカー教授曰く「すべてのものは古くなる」。
紀元後の中国で100年続いた統一王朝は4つしかなく、200年超えとなれば清一国。
現政体がそのまま続く確率の方が低いのでは…と考えるのは筆者だけでしょうか。
真の姿が観え難い国ですが、グローバル経済に組み込まれ世界的影響は計り知れません。
私たちは経済減速期に軟着陸ができるかどうかを注視しなければなりません。
佐藤 等