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社会生態学の究極の目的はよき社会をつくること【経営のヒント 514】

今年は社会生態学というドラッカー教授自身が名づけた領域に関係するメルマガをお伝えしています。
社会生態学の究極の目的はよき社会をつくることにあります。
そのためには大切なものを維持・継続し、古くなったものは変革し、新たなものを創造していかなければなりません。

社会の変革とは、具体的にいえば組織の変革や一人ひとりの働き方を変化させ、適応していくことに他なりません。
1973年、ドラッカー教授はマネジメントで次のように述べました。

<ドラッカーの一言>

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仕事と人の双方が、これからは史上最大の変動期にはいる。
産業革命以降、最大の変革期である。

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『マネジメント<上>』(1973)p.215

45年ほど前に「史上最大の変動期」と位置づけた要因は、組織社会と知識社会への変化でした。
つまり先進国では大多数の人々が組織に属し、知識労働者として働くようになった変化を原因とすることを指摘していました。

具体的には「肉体労働者の危機」と一節を設けて指摘しました。
肉体労働者(マニュアルワーカー)は産業革命が生み出した新しい集団でした。
彼らは経済の保障、地位、権力を得るため労働闘争を続けましたが、
生産性革命により、かつての中流階級をしのぐ生活水準を手に入れました。
端的に表現すると以下のようになります。

これらの変化は、19世紀から20世紀初めに起りました。

産業革命により工場は大規模化し、大量生産方式という変化が生まれました。
つまり仕事自体が変化しました。
それらの仕事は単純化され、流れ作業により、道具と手を使って行われました。
これまでは年月をかけ、経験で親方から習得したものは訓練で習熟できるようになりました。

これに対して農村から出てきた働き手は未熟練でもある程度の訓練を積めば働くことを覚えていきます。
人の働き方は変化したのです。

そして45年ほど前にオートメーションというコンセプトが広がり、製造現場等の自動化が促進されました。
人類は知識を道具に適用するというステージから知識を製造工程(知識)に適用するようになってきたのです。
仕事は変化したのです。

工場という製造現場の人員が大幅に減っていきました。
肉体労働者は減り、知識労働者の時代にシフトしたのです。
働き方を変えることを要求されたのです。
肉体労働者から知識労働者へと自ら転換できなければ「危機」がおとずれます。
危機を脱したはずの肉体労働者に再び試練がやってきたのです。

今、AI(人工知能)の導入が始まっています。
私たちの働き方はどのように変わるのでしょうか(506号も参考にして下さい)。

今日の結論です。
社会の変化(今回取り上げたのは技術の変化)とともに人の働き方を変えなければなりません。
社会がどのように変化しているのか、変化して行くのかを知ることは「危機」に陥らない最大の秘訣なのです。

佐藤 等

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