断絶の時代【経営のヒント 527】
ドラッカー教授は、『断絶の時代』(1969)で
「本書は、定量的ならざるもの、質的なもの、構造的なもの、
そして認識、意味、価値meaning and values、機会、優先順位を
見ていく」と述べました。
「意味」については第526回で取り上げました。
今回は「価値」についてみて見たいと思います。
ここで価値は、価値あるものという意味ではなく価値観に近い
意味です。
われわれの価値観は変化しているということです。
たとえば携帯電話が普及した21世紀では、私たちは
待ち合わせ場所をアバウトにしか指定しなくなりました。
「19時にススキノで」で終わりです。
それまでは「地下鉄ススキノ駅の改札の前で19時」というのが
普通でした。われわれの行動が変化したのです。
これは技術革新によって場所についての価値観が変化したことを
表わしています。
アバウトな情報でも目的地にたどり着けるという価値観です。
GPSと電子マップの普及がこれを後押ししました。
ヒトの価値観は日々変化しているのです。
ドラッカー教授は1969年、『断絶の時代』で教育に対する価値の
変化を記述しました。
<ドラッカーの一言>
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学校教育の延長は、第一に、教育が最高の価値で
あるとする信条によるものだった。
新しく生じた余裕は、当座の支出よりも教育に
使いたいと考える教育観が育っていた。
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『断絶の時代』p.290
今では当たり前のことですが、教育が未来への投資になったという
現実を当時、ドラッカー教授は伝えようとしました。
信じられないことですがドラッカー教授が就職した1920年頃は、
欧米では大学を卒業することを隠していた時代がありました。
それは「使えない奴」を意味していました。
価値観は、今も変化しているのです。
10年単位で見れば判ることの多くは今すでに起こっています。
見えないだけ、もしくは見ようとしていないだけです。
新しい価値観の変化を知覚するアンテナを立てましょう。
そこには、金脈というべき新たな機会が埋もれているのですから。
佐藤 等