組織は一人ひとりの自己成長の場である【経営のヒント 542】
私たちは成功の方法を求めすぎているのではないか。
ドラッカー教授からマネジメント哲学を学ぶほどに、そう思わずにはいられません。
それはマネジメントの本質が原理・原則にあるからです。
そこにあるのは成功の文字ではなく、失敗の文字です。
原理・原則にしたがっているからといって成功は保証されるわけではありません。
しかし原理・原則に反したとき長期的には必ず失敗が約束されています。
この冷徹な事実から眼を背けてならないと思うのです。
教授からそマネジメントの哲学を学べば学ぶほどマネジメントとは失敗しないために身に
つけなければならないものだということを思い知らされます。
成功を求めて原理に反した方法をとるという愚を犯さないために原理のマネジメントを
大いに活用したいものです。
ぜひ方法ではなく原理を手にしたいものです。
【マネジメントの原理2】
組織という道具には目的がある
社会的道具としての組織には必ず目的がありますこの原理には3つの目的があることは
540号に書いた通りです。
前回(541号)では第一の目的について述べました。
第二の目的は、組織に所属する人を成長させることです。
組織という道具は実質的に人によって運営されています。
よく経営資源をヒト・モノ・カネなどといいますが、お金に色は着いていません。
1万円札は一万円の価値。札に個性はありません。
モノには個性のあるものもありますが(絵画や土地)、多くのモノはどこかで調達出来たり、
代替性があったりします。
本質的な差が出るのはヒトという経営財産です。
そもそも人には個性があります。
つまり強みやワークスタイル、価値観などが異なります。
また経験や知識、スキルに違いがあります。
知識は事実上、組織に属している人の中にあります。
これらのヒトを第一の目的、組織が社会において特有の役割(ミッション)を果たすために
役立てることが経営幹部には求められています。
そのためには強みやワークスタイルという個性を発揮し、保有している知識やスキルを
用いて成果をあげることが求められます。
逆に組織に属する人は、組織という道具を使って自らを成長させなければなりません。
ドラッカー教授がマネジャーの5つの仕事に人材育成(部下の成長のサポート)を
挙げたのはこのためです。
しかし成長するのは一人ひとりの意志に委ねられます。
「馬を水飲み場に連れて行くことはできるが水を飲ませることはできない」のと同じです。
【マネジメント原理3】
組織は一人ひとりの自己成長の場である
自己成長は自己実現という言葉に置き換えることもできます。
ポイントは「自己」です。多くの人が人生の過半を過ごす職場。
その場で提供される「仕事」は自己の成長の手段となる有難い存在です。
課題もまた成長の手段になりえます。失敗から多く学ぶということです。
マネジメントとは、社会の役割と個人の成長という組織の目的を実現する原理と方法で
あるといえるでしょう。
数あるマネジメントの原理の中でも最上位に位置する大切なものです。
よく理解し使えるようにしましょう。
佐藤 等