事業が成立する3つの要素【経営のヒント 548】
「原理とは、それに沿えば必ずうまくいくというものではないが、それから踏み外した
ときには確実に失敗する」と早稲田大学MBAの西條剛央先生はいいます。
「失敗しないための原理のマネジメント」とは成功を求めて原理に反した方法をとるという
愚を犯さないためのマネジメントです。
前3回で「事業の目的」「事業の定義」「事業成立の3つの要素」を述べてきました。
今日の原理は、「われわれの事業を定義する」<マネジメントの原理10>です。
一件、「事業の定義」と何が違うの?と思われるかも知れません。
「事業の定義」は、事業の意味そのものを表しています。
これに対して「われわれの事業の定義」は「われわれの事業は何か」に答えることです。
具体的には①誰に②何を③どうやって提供するかに答えることになります。
この際、<マネジメントの原理9>の確認は欠かせません。
事業が成立する3つの要素。
・事業は組織を取り巻く環境に適合していること
・事業は組織の使命にそっていること
・事業は組織の強みを生かせること
組織は社会の機関であり、特定の目的(ミッション)を実現するために存在します<原理3>。
さらに、組織の目的(ミッション)を実現する手段として事業がある<マネジメントの原理6>の
ですから、事業は組織を取り巻く環境に適合していなければなりません。
事業に組織の強みを提供することは、何を提供するかを決定づけます。
強みに立脚しないで提供される財やサービスは顧客に支持されません。
一連のことは次の事業の定義<原理8>を確認することを意味します。
・事業はプロセスである
・事業というプロセスに知識を投入する
・事業というプロセスから経済価値(顧客価値)を生み出す
事業がプロセスであることは③の「どうやって」に関係しています。
つまりどのような業務、仕事の連載によって提供されるのがよいのかを設計し、運用する
ことを意味します。
またプロセスへの知識投入は組織の強みを生かすことに他なりません。
業務や仕事、作業に組織の強みは込められるからです。
さらに事業というプロセスが生み出すものは顧客価値です。
それこそが事業の目的は顧客の創造である<原理7>を実現することにつながっています。
「われわれの事業は何か」に答えることは、①誰に②何を③どうやって提供するかに
答えることです。
ドラッカー教授が「われわれの事業の定義」するために用意した問いに
「経営者に贈る5つの質問」があります。
「われわれのミッションは何か」
「われわれの顧客は誰か」
「顧客にとっての価値は何か」
「われわれにとっての成果は何か」
「われわれの計画は何か」
とりわけ重要なのは、顧客全般にとっての価値という考え方は存在しないということです。
特定の顧客に特定の価値を提供するのが事業です。
「われわれの事業を定義する」<マネジメントの原理10>は、組織の目的を提供する
手段である事業を具体的に考える大事な活動です。
それは組織運営の1丁目1番地といっても過言ではありません。
佐藤 等