ポスト資本主義社会【経営のヒント 209】
今回も『ポスト資本主義社会』 の序章から一言をお伝えします。
1960年頃ドラッカー博士が知識労働と知識労働者という言葉をつくりました。
それから50年が経とうとしています。
昨今伝えられる格差社会は、財産や収入の多寡を問うているようにみえますが、実は持てる知識の活用度の差に他ならないような氣がします。
今や富の創出は、資本と労働をどう使ったかというより、<今日の一言>で表現される知識をどう使ったかに依存していることに異を唱える人は少ないのではないでしょうか。
<ドラッカーの一言>
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いまや、知識の仕事への応用たる「生産性」と
「イノベーション」によって、価値は創出される。
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『ポスト資本主義社会』 1993年 ダイヤモンド社より
ドラッカー博士は、続けていいます。
「知識社会における最も重要な社会的勢力は知識労働者となる」と。
ということは、第一に求められることは、私たちは知識労働者であるという自覚です。
これがなければ始まりません。
知識労働者は、知識を所有し、何処へでも持っていけます。
IT技術の進展は、そのことを加速させています。
その知識を資源として価値に変えるもの、それが知識労働者なのです。
第二に求められていることは、知識の活用度、言葉を変えると知識労働者の生産性を上げることです。
その方法については第一部第4章で詳しく述べます。
このカテゴリーに属する労働者としてサービス労働者という層が存在します。
知識労働者の決めたレベルの仕事を限定的な知識を使って現場で実行する人たちです。
広い意味では知識労働者ですが、厳密には教育、修練等により知識の実装率を上げなければならない予備軍です。
これらの層の戦力化と知識労働者へのステップアップが組織のもう一つの生産性向上の鍵を握っています。
ポスト資本主義社会は、定着し始めています。
自動車や家電などのように肉体労働者の時代に生まれた産業は、新たな産業へその主役の座を移さざるを得ないでしょう。
バイオや環境産業などが次の主役になるのかもしれません。
いづれにしてもこの先の時代を生き延びるには、個人も組織も日々知識の実装率を高める意識を持たなければなりません。
教えられる時代は過ぎ去り、学ぶ時代が到来しました。
残念ながら学ぶ技術は、これまでの学校教育では修得できませんでした。
「知ること」と「解かること」の間には、太平洋ほどの大きな差があります。
教育は「知ること」を教えましたが、学ぶことは「解かること」を求めます。
「解かること」は、行動・実践を条件とします。
「身体で解かる」という表現がありますが、学ぶとはまさにそのことを示しています。
金融不安、恐慌の足音も…などといわれる今、やることは一つです。
実践を伴った学びで知識の実装率を高めるほかないのです。
成果は未来にあると覚悟を決めて淡々と学び続けたいものです。
佐藤 等