ポスト資本主義社会【経営のヒント 208】
次なる時代をどのように迎えたらいいのか。
1993年に著された『ポスト資本主義社会』は、そんな問いに応えるための一冊です。
そのための基本スタンスを示す言葉が次の言葉です。
「われわれがあとにしつつある時代」がポイントです。
来るべき時代ではないことに注意が必要です。
<ドラッカーの一言>
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本書は、われわれがあとにしつつある時代を
改めて見直そうとするものである。
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『ポスト資本主義社会』 1993年 ダイヤモンド社より
西洋の歴史に転換点は三度あったとドラッカー博士はいいます。
それは13世紀の都市化と15世紀のルネサンスの隆盛や科学的探究の再発見、18世紀の産業革命、資本主義と共産主義の誕生などです。
およそ200年周期で起こっていることが解かります。
後者二つの転換点は、年号までわかっています。
1445年の印刷革命、1776年の産業革命が時代の幕を切って落としました。
これらの変化が社会的に一般的な空気として受け入れられるには約50年かかったといいます。つまり今起こっていることは、50年後に社会の常識として受け入れられるということを歴史が示しているのです。
そして四回目が1960年ごろ始まりました。
約50年続くといいますから、2010年~2020年頃まで続くとドラッカー博士は言います。
もう終盤です。私たちは、そんなポジションにいることを今一度確認したいと思います。
そんなポジションでできることが「改めて見直すこと」です。
かつてフランスの哲学者B.ジュブネルが「未来を孕(はら)む現在」と言ったように、未来を見ようとしたら今を観ることです。
ドラッカー博士は「すでに起こった未来」と表現し、1960年以降の今を観ることで次の時代が観えてくると言います。
それゆえドラッカー博士は、未来学者といわれることを極度に嫌います。
今を観る社会生態学者であることを誇りにします。
このような時代に生きる私たちが観るべきものとしてドラッカー博士が本書であげた柱が社会と政治と知識です。
過去を支配していた常識的なものが意味を失い、または役割を大きく変えます。
例えば、国家、資本と労働、学び方などです。
このように私たちにとって基本的な物事の意味が変わります。
最大の問題は、私たちには思考の慣性があるということです。
急に常識を変えることはできないということです。
しかし確実に250年続いた常識が意味を失います。
佐藤 等
このことにいち早く対応した人たちが、新しい常識を構築します。
約50年かかるということは、既に常識化しつつあるものもあるはずです。
リーマンショックが一つの国家の力が及ばない世界に私たちがいることを証明しました。
国家を超えた別のネットワークが力を持っている時代です。これが新しい時代の常識です。
いずれにしても私たちは、そんな時代にいることを自覚するところからスタートしなければなりません。そうして何が過去の常識であり、何が新しい時代の常識であるかを見極めようと鋭くアンテナを立てていなければなりません。過去の時代に置き去りにされないためにも。