マネジメントの役割【経営のヒント 236】
『マネジメント―課題、責任、実践―』、第4章は「マネジメントの役割」という章からです。
<ドラッカーの一言>
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マネジメントは、常に現在と未来、短期と長期を
見ていかなければならない。
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『マネジメント』p.49 1973年 ダイヤモンド社より
ドラッカー博士は、マネジメントの3つの役割(前回記述)の他に、経営者は時間という要素を常に考慮しなければならないといいます。
それは複雑かつ重要な要素です。
現在目の前で起こっている事象は、過去の意思決定と行動の結果です。
例えば、あの時の投資の意思決定が現在のリース料を決めているのであり、また昨日の納品がクレームを生んでいるのです。
目の前にある何らかの「結果」の多くは、過去に「原因」があるのです。
そこでは、改善や課題対応といった行動が求められます。
もう一つ目の前にあること、それは未来の「原因」になる可能性のある事やものです。
例えば子供手当てが実現したら、わが社はどうなるのだろうか。
電気自動車が世の中に出たら、わが社に何の関係があるのだろうか。
消費財メーカーがアジア進出を目標にあげているが、わが社に何の関係があるのだろうか。
未来の「結果」を正確に予測することは出来ません。
出来ることは今を見るだけです。
目には見えないが間違いなく吹いている風をどう読むか、それを洞察といいます。
経営者は今を見て未来を予見しなければならないのです。
ドラッカー博士の有名な言葉、「すでに起こった未来」は、そのことを端的に示す言葉です。
未来を見て結果を引き寄せるには、機会を探索し新たな価値を創造する、イノベーションという企業行動が欠かせません。
さらに同じような関係ですが短期と長期を見ることが大切だといいます。
しかし短期も長期も基本的には、未来に係わることです。
ここで重要なことはベクトルの方向性の一致です。
例えば、企業の価値観や信条に反する行為で目先の利益に飛びつくことや、壮大な構想を実現しようと強みに基づかない機会に賭けることは避けなければなりません。
今という地点から伸びている短期のベクトルの方向性と、やはり今という地点から伸びている長期のベクトルは、様々な要素で同じ方向を向いていなければならないのです。
前の問題、課題、意思決定を迫られていること、明日の行動などすべてに過去、現在、未来、短期、長期という時間軸のメジャーを当ててみてください。違ったものが見えてくるはずです。
一種のトレーニングですがマネジメント力の格段のアップが期待できます。
意識して取り組みたい課題の一つです。
佐藤 等