マネジメントはツールとしての情報を必要とする【経営のヒント 849】
マネジメントはツールとしての情報を必要とする。
『経営の真髄』<下>p.143
「人類の歴史が教えるように、ツールとコンセプトは相互に依存し、影響を与え合う。互いに他方を変える」とドラッカーは言う。
ドラッカーは、情報はツールであるといいます。情報は、目的をもってデータを集めたものです。
人類は古くは18世紀に「百科全書」という形式をもってデータを集め、一つのツールとしました。こうして集められた情報が目指したものは、徒弟にならずとも技能者になれることでした。こうしてテクノロジー(技術)というコンセプトが発明されました。
現代ではマネジメントに関係の深いツールはコンピュータです。コンピュータがデータを蓄積し、目的にしたがって情報をアウトプットしています。会計システムはその典型です。会計という仕組みは500年前に誕生していますが、現代ではコンピュータの中にデータは格納さ、仕訳データから決算書という情報が生成されます。コンピュータを用いた決算書という情報は、マネジメントにおける「基本情報」として欠かせないものになっています。
コンピュータという新しいツールは、マネジメントで用いるコンセプトに影響を与えます。ドラッカーは会計情報などの「基本情報」に関するいくつかの影響を記しています。
第一は、伝統的な原価計算を越えていく動きです。伝統的な原価計算は、在庫の評価を目的としていますが、新しい原価計算は製造のみならず、流通チャネル、顧客管理、アフターサービスなど事業の全プロセスを視野に入れています。
第二は、製造業以外のサービス業等でコストコントロールを行う方法としてABC原価計算、すなわち活動ベースのコスト計算を導入する動きです。これらの業種の大半は、固定費がコストの大半をしめており、変動費と固定費の区分に大きな意味をもちません。このような業種のコストコントロールをいかに行うべきかという問題意識から様々な試みが行われています。
第三は、従来自社のコストという枠内でコスト計算を行ってきものを、企業という枠を超えて一つの製品やサービスを顧客に届けるまでの全プロセスを視野に入れたコストコントロールを行おうとする動きです。実際、すべての原材料から自社で作っている企業はほとんどありません。仕入、外注が当たり前の状況下でいかにコストコントロールを行うかという観点から経済連鎖全体を管理しようという動きが出てくるのは当然です。
すでに蓄積してきたデータをどのような目的で集計するかという視点から観ると「基本情報」もまだまだ活用の仕方があります。最近では生成AIというツールの登場により、目的をもった情報化が容易にできるようになってきています。たとえば「経済連鎖全体のコスト」というコンセプトに関する情報の入手がツールの進化で実現できる可能性が大いに出てきたということです。
一度立ち止まって、目的、つまりコンセプトを明確にし、今のデータを用いてどのような情報を手にできるかを考えてみませんか。
佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)