多元社会の理論【経営のヒント 187】
今日も前回に引き続き『断絶の時代』第9章「多元社会の理論」からお届けします。
今日の一言です。
<ドラッカーの一言>
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
意識して非生産的なものや陳腐化したものを
捨てている組織が、新しい機会に不足することはない。
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
エターナル版『断絶の時代』1969年 ダイヤモンド社より
この章の第二節は「目的に関わる二つの決定」というタイトルがついています。
組織が目的を決めることの重要性については、前回もくどいくらいに書かせていただきました。しかしドラッカー博士は、このように切り出します。
「目的に関する最も困難で最も重要な決定は、何をなすべきかについてではない」と。
まさか・・・という感じです。
では何を決めるのか。
そこで二つの決定です。
「第一に、もはや価値なしとして何を捨てるかという廃棄についての決定であり、第二に、何を優先するかという集中についての決定である」。
順番が大切です。
<捨てる>⇒<集中する>です。
多くの組織が集中できずにいるのは、捨てること、つまり廃棄ができずにいる現状があるからではないでしょうか。
組織には慣性があります。つまり物事を変えることに対する抵抗力のことです。
組織が大きければ大きいほど抵抗力は大きくなります。
大企業が舵取りを変えても針路を変えるのに時間がかかるのはそのためなのです。
最近、東芝がハードディスクDVDレコーダー事業から撤退すると表明しました。
当面アフターサービスは残すとのことです。全面廃棄とはいきません。
こうした追加損失の存在も大企業の判断を鈍らせる原因です。
その点、小企業は有利です。
俊敏性が小企業の持ち味です。この特性を生かす企業行動が廃棄なのです。
今日の一言は、廃棄という能力を身につけた企業の強さを表現したものです。
1965年頃始まり現在も続いている『断絶の時代』には、この能力は特に欠かせないものとなっています。昨日と今日が異質である時代には、変化が頻繁に起こります。
変化は機会をもたらします。しかしその機会をつかむことができる企業は一握りです。
それは廃棄という能力を身につけた企業です。
かつて世の中におそらく何十万件もあった酒屋さんは、ほぼ絶滅してしまいました。
一部はコンビニに。一部はワイン専門店などの業態に。
そしてディスカウンターの登場により多数が息の根を止められました。
廃棄という能力の大切さを実感できる出来事です。
廃棄は、経営資源に活力を呼び覚ます技術です。
すべてのものは古くなるという鉄則に従うと、古くなった過去の機会、つまり今のビジネスに使われている資源は、すでに非効率に使われています・・・と考える思考が大切です。
廃棄は資源を解放します。
何を廃棄するかを決めることが新たな道を切り拓きます。
皆さんも新年度を迎えるにあたり、新たな機会を得る準備をしてみては如何でしょうか。
佐藤 等