成長の時代から発展の時代へ【経営のヒント 178】
今日は、『断絶の時代』第一章からです。成長の時代から発展の時代へ。
ドラッカー博士は、この著書を著した1968年から遡ること55年の1913年から経済は発展していないと指摘しています。成長はしたが、構造的にはなんら変化がないと。つまり規模的に拡大しているが、質的には変化がないといいます。
この時期は、農業、鉄鋼業、自動車産業に支えられた時代です。
今日の一言は、この変化のない時代からの転換点にあって発せられたものです。
<ドラッカーの一言>
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
偉大な一九世紀の建造物の完成に精を出している間に、
まさにその土台そのものが変化を始めたのである。
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
『断絶の時代』(ダイヤモンド社)より
「偉大な一九世紀の建造物の完成に精を出している間に」という言葉は、一九世紀型のこれまでの構造の中で規模的な成長を追い求めていることを示しています。そして、その間に次の時代を担う動きが出てきたことを「土台そのものが変化を始めた」という言葉で表現しています。
つまり構造の変化です。
この変化のことを『断絶の時代』とドラッカー博士は言いました。
この変化は、実に50年にも及ぶもので現在もその只中にあります。
現代は、一九世紀に出来上がった土台と次の時代を担う新しい土台が入り混じって存在している時代です。そうして新しい土台の上に質的な変化を伴う「発展」が生まれます。新たなステージの誕生です。私たちがここで学ばなければならないことは二つです。一つは、成長と発展の違いを意識すること。もう一つは、「新しい現実」を受け入れビジネスの機会とする姿勢と眼をもつことです。
最初の点、成長と発展の違いについてです。『イノベーションと企業家精神』でドラッカー博士も触れたシュンペーターという経済学者がいます。
彼の著書『経済発展の理論』(1912年)には、「馬車を何台集めても蒸気機関車にはならない」という有名な記述があります。馬車が社会に増減することを成長といいます。
成長にはマイナス成長もあります。馬車を作っていた人とは、まったく関係のないところから代替手段となる蒸気機関車が生まれました。これが発展です。ステージが変わり、人々に移動・輸送手段として新しい価値を与えました。これをイノベーションといいます。
断絶の時代は、イノベーションの時代だともいえます。
そんな時代に私たちは、生きているのだということをあらためて確認したいと思います。
第二点、「新らしい現実」を受け入れ、ビジネスの機会とする姿勢と眼を持つということについてです。ドラッカー博士は、『新しい現実』という著書を1989年に出版しています。
断絶の時代と同じ線上にある著書です。
これまでの現実を確認する→新しい現実を知る→その変化をつかむ→その変化がいかなる機会となるかを知覚する→その機会を元にイノベーションにチャレンジする→そのうちいくつかが成果をあげる→経済価値に変わりイノベーションが起こったという。
こんなプロセスを経てイノベーションは起こります。
新たな価値は、新たな土台から生まれます。
ドラッカー博士が1968年の時点で取り上げた新しい土台(新しい現実)は四つあります。
企業家の時代、グローバル化の時代、組織社会の時代、知識の時代です。
これらの変化につては、現在まさに日々実感するところです。
次回以降、これらについて触れ、私たちのビジネスの機会や求められる姿勢を探っていきたいと思います。
佐藤 等