断絶の時代【経営のヒント 177】
今日から取り上げる『断絶の時代』は、1969年に発刊され、ドラッカーを現代社会最高の哲人として不動の地位につけた一冊です。ドラッカー教授の著書は、マネジメント系の著書と社会生態学系の著書に分けられます。「社会生態学」は、ドラッカー教授ご自身が名づけたものであり、観察者ドラッカーの別名です。
そして『断絶の時代』は、社会生態学の代表的な一冊なのです。
この本から私たちが学ぶべきことは、今日の見方。
ドラッカー教授の言葉によれば「明日のために今日どう取り組むか」を知ることです。
<ドラッカーの一言>
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重要なことは、今日とは異なる側面とその意味である。
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『断絶の時代』(ダイヤモンド社)より
観察者ドラッカーの手法は、まず「見る」ことです。ここでの「見る」ことの目的は、変化を知ることです。本書で取り扱った「今日とは異なる側面」は、
(1)新技術・新産業、(2)世界経済、(3)社会と政治、(4)知識です。
これら4つの側面に変化が起こったということです。「断絶の時代」とは、言葉どおり連続しない時代。非連続の時代です。変化を見るためには、大切な前提条件があります。今日をチャンと把握していることです。
今日を知っているからこそ、変化がわかります。
これが意外と難しいのですが・・・。
観察者ドラッカーのもう一つの手法は、「その意味」を考えることです。
切り口が多様です。しかし個々の事象は、目新しいものではないとドラッカー教授ご自身が指摘しています。しかし「集めて一つの絵とするならば、その景観は、われわれが日常見ているものとは大きく異なる」と述べています。手にするジグソーパズルの一片、一片は見慣れた図柄。しかし完成したものを見るととんでもないものが出来上がる。そんなイメージです。ドラッカーの社会を観察する眼の鋭さの理由の一つは、繰り返しになりますが、多様性です。新聞記者、経済アナリスト、政治学者、コンサルタント、経営学者という職業の遍歴。技術や宗教、音楽や絵画などへの興味と造詣。これらのものが織り込まれ一つの慧眼が生まれました。とてもとても誰もが真似ることができる代物ではありません。
しかしその本質、「見ること」、「意味を考えること」についての手法や姿勢は、学ぶに値します。
こうして描き出された時代に生きる我々をドラッカー教授は、役者に例えました。
そして不条理劇場に出演しているとも。後に『乱気流時代』と述べたように、そこには失速を誘う風が吹いています。予測できない突風に見舞われます。そんな時代に生きる私たちは、今の変化をとらえ明日のために今日どう取り組むかを必死に考えなければなりません。変化に身をまかせていてはなりません。
良く見て、どう取り組むのか。しかも今日行動することが大切なのです。
佐藤 等