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明日を変えるのは誰か【経営のヒント 163】

『明日を支配するもの』の第3章は、25ページですが、示唆に富みなかなか読み応えがあります。
ということで今日も第3章「明日を変えるのは誰か」からです。
今日の一言は、痛烈に耳に残ります。

<ドラッカーの一言>
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組織改革だけでは単なる動作であって、
意味のある行動の代わりとはならない。
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『明日を支配するもの』1999年

この言葉は、ドラッカー博士が「チェンジ・リーダー」にとっての3つのタブーとして掲載されたものの中にあります。
3つのタブーとは、
(1)現実と平仄の合わないイノベーションを手がけること、
(2)真のイノベーションと単なる新奇さを混同すること、
(3)行動と動作を混同すること、
です。今日の一言は、(3)の行動と動作の違いに関して、発せられたものです。
組織改革が功を奏するのは、「何をいかに行うかという問題と取り組んだ後に行う」場合です。
成果の形、明確な目的、そして目標がない限り、その動きは単なる動作にしかならないということです。これは、組織改革の話にとどまりません。目的を理解しないまま仕事という動作をひたすら続けるスタッフを目にしたことはありませんか。

例えば、成果意識が薄いために数字に繋がらないルートセールスマン。また、いつまでに中間報告をするのが効果的かを考えないため、締め切り間際に中間報告する企画マン。目標を理解していないため、コストをかけ過ぎた販促計画を立てる広告マン。
動作から行動へ意識を切り替えることの大切を痛感させられます。

タブーのほかの二つについても触れておきます。現実の変化を無視したイノベーションを行うことほど成功確率の低いものはありません。
成功するイノベーションは、必ず変化をとらえています。もう一つのタブーです。
新奇さの追求は、不要です。毎日同じことを繰り返すことに飽きたという理由で、機会も強みも無視して新しいことに取り組むこともまた、失敗を運命づけられています。経営者の中には、新しいことに取り組むのが好きなタイプが現にいます。
ぐっと堪えて考えてみてください。前回書いたように成功の条件に沿っていないものは、やめるべきです。

さてこれら三つのタブーは、当事者にはなかなか解りにくいものです。例えば、変化を捉えているのかどうかに対して正確に答えを出すことが難しい場合があります。そんなときの切り札が、小規模にテストすることです。実際に小さくはじめてみる。そして顧客の意見を聞く。その結果を受け、修正した商品を世に送り出す。そして再び顧客に問う・・・この繰り返しが重要です。イノベーションは、まったく新しいものを世に問います。そこでは、市場調査は意味を成しません。
なぜならまったく新しいものだからです。分析よりも知覚が重要視される局面です。
顧客に問い、感じる―知覚が大切です。
動作から行動へ、分析から知覚へ。意識して取り組みたいものです。

佐藤 等

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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