最高の仕事への動機づけ【経営のヒント 88】
第23章にも「最高の仕事」という言葉がつきます。タイトルは、「最高の仕事への動機づけ」です。
前章で「最高の仕事」のチューンアップを終わった後は、どのように人を動機づけるかです。
この2つの章は、ワンセットです。この章で凄い言葉を発見しました。その言葉は、顧客満足(CS)という考えの広まりとともに市民権を得つつある「従業員満足」(ES)という言葉です。
ドラッカーは50年前に、この言葉を使うとともに、動機づけの観点からなんとこの言葉を“否定”しています。
「評価が不能であって意味もない」、「満足とは受け身の気持ちである」などの表現で明確に、バッサリとやっています。
<ドラッカーの一言>
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金銭的な報奨が動機づけとなるのは、他のあらゆる要因によって、
働く人たちが責任をもつ用意ができているときだけである。
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新訳『現代の経営』(ダイヤモンド社)より
成果報酬に関する議論が活発ですがドラッカーは、この点でも明快です。すなわち、金銭的な報奨は、重要であるが消極的な意味があるにすぎないと言っています。
それでは、ドラッカーが言うところの動機づけに必要なものとは何でしょうか?
答えは、「責任」です。仕事における責任とは、働く人が欲するものではなく企業が要求するものだと言い放っています。その上で「責任の持たせ方」を説いています。
参考までに・・・(1)正しい配置、(2)高い基準の要求、(3)自らの仕事を評価するための情報、(4)マネジメント的な視点をもつための経営参画の4つです。
どれも一筋縄ではいかないものばかりです。
なぜなら人は、責任を欲する面を持つと同時に責任を回避しようとする側面も持っているからです。動機づけの難しさの原因はここにあります。
84号に次の言葉を書きました。
・仕事の報酬は給料である
・仕事の報酬は能力である
・仕事の報酬は仕事である
・仕事の報酬は成長である
「給料」、「能力」といっている人は、まだまだです。責任をもって仕事をしている人は、「仕事」、「成長」領域に入っています。この領域に持っていくのが経営者の腕の見せ所です。
経営者は、「最高の仕事」をしてもらうために、つねに腕を磨きたいものです。
佐藤 等