多角化への誘因【経営のヒント 363】
前号(第56章「多角化への誘因」)で多角化は複雑性を助長する要素であることを述べました。
そのことを理解して、はじめてシンプルな多角化を目指すべきとのドラッカー教授の教えが
深い意味をもっていることを理解できるようになります。
今日は、その続きです。
<ドラッカーの一言>
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多角化には内的な誘因と外的な誘因
がある。
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『マネジメント<下>』p.119 1973年 ダイヤモンド社
ドラッカー教授は、複雑性を排除するためできるだけ多角化を選択しないことを薦めています。
したがって「逃れることのできない多角化」のみ、行うべきと強調します。
その当たりの意識レベルが低いと安易に多角化を選択してしまうことになります。
そのためにも多角化へ誘う様々な誘因について指摘しました。
<内的誘因>
1)同じことの繰り返しは飽きるという心理的な欲求
2)規模の不適切さに対応したいという誘因
3)コストセンターを収益源化したいという誘因
<外的誘因>
4)一国の経済規模が小さいことを克服したいという誘因
5)市場のグローバル化に対応したいという誘因
6)分岐する技術を活かしたいという誘因
7)国別の税制の違いを活用したいという誘因
これらの誘因は現実のものであり、多角化が正解となることも多い。
しかしどんなケースも多角化は善とすることは、慎まなければなりません。
複雑性を抱え込み、成果に対して逆効果となるからです。
一度立ち止まってどんな誘因で多角化を望んでいるのかを確認しましょう。
いずれにしても事業は、単純さと複雑異性のバランスの上に構築しなければなりません。
単純さは停滞と陳腐化を招き、複雑性は非効率を招きます。
その特性を意識して事業の多角化を考えていきましょう。
佐藤 等