結論:マネジメントの正当性【経営のヒント 390】
228号(2009.5.7)から162回、4年半続いた『マネジメント』も今日で最終回です。
その当時は、まだ『もしドラ』は発売されていませんし、私の著書もまだ発売されていませんでした。
ずいぶんと時間が経ったような気がします。
それでは最終章「結論:マネジメントの正当性」から一言です。
<ドラッカーの一言>
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私的な強みは公益になる。
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『マネジメント<下>』p.302 1973年 ダイヤモンド社
第二次世界大戦終結の直後、マネジメント・ブームが世界を席巻し、
これによりマネジメントは世の注目をあびる存在となりました。
この時のことをドラッカー教授は「当時は、自分たちがマネジメントを
行っていることを自覚している経営者はほとんどいなかった」と述べています。
ほかのブーム同様、マネジメント・ブームも終わりを告げます。
ドラッカー教授は、このブームによってマネジメントは
単なるスキルやツールであるという誤解が残ったと言います。
ドラッカー教授は、現代の組織社会においてはマネジメントを行う層を差し置いて
リーダーと呼べる人はいないと指摘しました。
マネジメント層は、社会との関わりの理解と、社会への貢献の意識なしには
大きな成果をあげることはできないと断じました。
マネジメントとは、単に経営技術を駆使する存在ではなく、
社会のリーダーを担っていかなければならないのです。
企業は社会に存在を許される機関です。
自らの組織に奉仕することを通じて社会と地域に奉仕することが求められるのです。
ドラッカー教授は、組織が社会に存在が許される状況を
「組織の正統性」という言葉を使って言い表しました。
「正統性」、聞きなれない言葉ですが、教授が政治学の学者であることから用いられたものです。
それでは、どのような状態がマネジメントの正統性がある状態なのでしょうか。
答えは今日の一言です。
いたってシンプルです。
それは組織が、そこに属する一人ひとりの強みを社会の役に立つように
貢献を行わせ、成果をあげ、かつ自己実現をさせている状態です。
「私的な強み」とは、一人ひとりの強みを生かせということです。
そして「公益」とは、その結果世のためになること、
具体的には組織の使命を果たすことを実現することです。
さて、この一言が、長く続いた『マネジメント』の結論です。
いかがでしょうか。
ちょっと驚きかもしれません。
しかし正統性があるといわれる組織、
つまり一人ひとりの強みを生かし切っている組織がどれだけあるでしょうか。
はなはだ疑問です。
ということは、ドラッカー教授のいうマネジメントの実現はこれからということになります。
戦後のマネジメント・ブームまでは、マネジメントを行っているという自覚がありませんでした。
60年を経て状況はどうでしょうか。
マネジメントという言葉を知り、自覚は出たものの、
何がマネジメントであるのかを理解している人はほとんどいないというのが実情ではないでしょうか。
ドラッカー教授のマネジメントは明日からすぐに役に立たないかもしれません。
しかし、しっかり身につければ一生役に立つものです。
本書『マネジメント』を用いたメルマガは、本日で最終回です。
ナレッジプラザでは、マネジメントを学ぶ機会を読書会などの形で提供しています。
積極果敢な姿勢で参加し、本物のマネジメントを身につけることを切望しています。
佐藤 等