ロボットと仕事競えますか【経営のヒント 515】
「ロボットと仕事競えますか 日本は5割代替、主要国最大」。
2017年4月23日の日経新聞の一面に掲載された記事です。
ロボットの導入余地は主要先進国の中では55%とトップの数字です。
喜ぶべきことなのか、悲しむべきことなのか…
<ドラッカーの一言>
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仕事の道具とプロセスすなわち技術の二大要素が、
人間の行うことと行えることを規定してきた。
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『断絶の時代』p.25
AI(人工知能)という技術の進化が止まりません。
機械の自動化は常に機械化の最重要テーマでした。
それがAIの登場で一気に進んでいます。
ロボットは仕事の道具そのものです。
またより多くのプロセスをこなすことはロボットの性能を評価する一つの基準です。
この二大要素が大いに進化したといえます。
これまで人間が行ってきた仕事のプロセスの一部をロボットが担う可能性が急速に高まっています。
今回の調査は実に820の職業、2069の業務について分析しました。
記事よると今後、日本は55%の業務がロボットへの代替が可能とのことです。
このことは「人の行えること」の境界線を動かすことを意味します。
以下の4つの領域に分けて少し考えてみましょう。
1.<人間が行えないこと・機械が行えないこと>
ここは人智の及ばない領域です。神の領域とでもいうべきでしょうか。つまり仕事として成立しない。
たとえば干ばつを防ぐため雨を降らせることは小規模なもの以外成功していません。
2.<人間が行えないこと・機械が行えること>
人間の能力を超えているが、機械の道具としての能力により仕事のプロセスに組み込まれている領域。
たとえば現代の気象予報という仕事の精度は、気象予報衛星の運用によりこの50年で格段の進歩を遂げました。
この領域もかつては神に祈るしかない領域 1.でした。
3.<人間が行えること・機械が行えること>
これが自動化の領域。「ロボットと仕事競えますか」のゾーンです。
基本的には抵抗は無力、無駄。たとえばレジの自動化が進んでいます。
どんなにトレーニングしてもスピードと正確性ではかなわないレベルまで来ています。
4.<人間が行えること・機械が行えないこと>
判断や創造性を伴う仕事などがこれにあたります。典型的には経営者が該当します。
先の日経新聞の記事連動Web<私の仕事、ロボットに奪われますか?>で調べてみました。
⇒https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/ft-ai-job/
<業種>マネージメント → <職業>経営者
この段階で22.2%がロボットで代替可能と結果が出ます。
<より詳細に調べる>にすすむと63項目の業務や仕事が出てきます。
たとえば次のようになります。
・組織内の統制活動を管理する― ロボットで代替可能性100%
・組織のプロセスやポリシーを変更する― ロボットで代替可能性50%
・経理・財務を統括する― ロボットでも代替可能性0%
22.2%という経営者の数字はこれらを統合したものです。
経営者層の中には100%ロボットで代替される仕事に携わっている人もいるということです。
さて、記事が長くなりました。
人間の能力を機械で代替される領域にばかり注目が集まっていますが、2.の領域のように、
すでに人間の能力を超えた部分を機械が代替しているものもあります。
いたずらに機械やロボットと競っても仕方がありません。
人間しかできない領域に居場所を見つけるという姿勢は今も昔も変わらないハズです。
佐藤 等